2025年12月27日

女性のいびきは珍しくない〜更年期との深い関係
女性のいびきは男性とは異なる特有の原因があり、ホルモンバランスの変化が大きく影響しています。
この記事では、なぜ女性が更年期以降にいびきをかきやすくなるのか、その医学的な背景と具体的な改善方法について、詳しく解説します。
いびきが起こるメカニズムとは
いびきは、睡眠中に空気の通り道である「気道(上気道)」が狭くなることで発生します。
気道が狭まった状態で空気が通ると、喉の奥にある軟口蓋(のどちんこ)や舌の付け根が振動し、「いびき音」として聞こえるのです。
起きている間は、喉の筋肉が適度な緊張を保ち、空気が通る十分なスペースがあります。
しかし眠りに入ると全身の筋肉がゆるみ、喉や舌を支える筋肉も弛緩します。
このとき、重力の影響で軟口蓋が下がり、舌が喉の奥へ落ち込むため、気道が狭くなりやすくなるのです。
さらに、肥満や首まわりの脂肪、鼻づまり、寝姿勢(特に仰向け)などが重なると、気道が物理的に圧迫され、いびきはより大きく・頻繁になります。
主な原因としては以下が挙げられます。
飲酒や喫煙による筋肉の弛緩
睡眠薬の服用
疲労やストレス
鼻炎・アレルギーによる鼻づまり
加齢による筋力低下
肥満(特に首・喉の脂肪)
女性特有のいびきの原因 〜ホルモンバランスの影響〜
若い女性がいびきをかきにくい理由
女性が若い頃にいびきをかきにくいのは、女性ホルモン「プロゲステロン」の働きが大きく関係しています。
このホルモンには、喉の奥にある「オトガイ舌筋」という筋肉を活性化させ、気道を広げたまま維持する作用があります。
そのため、睡眠中も気道が確保されやすく、空気の通り道が狭まりにくいのです。
性成熟期の女性はこのホルモンが十分に分泌されているため、男性に比べていびきをかきにくい傾向にあります。
更年期に訪れる変化といびきへの影響
40代後半から50代にかけて訪れる「更年期」では、卵巣機能の低下により女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌が急激に減少します。
プロゲステロンが減ると、喉や舌を支える筋肉の働きが弱まり、睡眠中に気道が狭くなりやすい状態になります。
さらに更年期以降は、基礎代謝の低下や体重増加により首周りや舌の根元に脂肪がつきやすくなり、物理的にも気道が圧迫されます。
このため、女性でも中年以降になるといびきが目立つようになるのです。
また、更年期特有の自律神経の乱れも関係しています。
ホットフラッシュや寝汗、動悸などの症状により睡眠の質が低下し、浅い眠り(レム睡眠やN1ステージ)が増えると、筋肉の緊張が保ちにくくなり、いびきが悪化することがあります。
加齢によるいびき悪化と睡眠時無呼吸症候群のリスク
年齢を重ねると、全身の筋肉が徐々に衰えていきます。
これは喉や舌を支える筋肉も例外ではなく、舌を前方に保持する力が弱まると、舌の根元(舌根)が喉の奥に落ち込みやすくなる「舌根沈下」が起こりやすくなります。
結果として、気道がさらに狭まり、いびきや睡眠時無呼吸の原因となります。
閉経後の女性では、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の発症率が閉経前の約3倍に増えるという報告もあります。
つまり、更年期以降はいびきが単なる睡眠の問題ではなく、全身の健康リスクと直結する時期に入るということです。
女性特有の睡眠時無呼吸症候群の特徴
男性では「大きないびきのあとに完全に呼吸が止まる(無呼吸)」ケースが多いのに対し、女性は「呼吸が浅くなる(低呼吸)」タイプが多い傾向にあります。
このため、周囲からも気づかれにくく、「いびきはないのに日中眠い」「疲れが取れない」といった症状が続くことがあります。
その結果、更年期障害やストレスと勘違いされ、診断や治療の開始が遅れてしまうケースも珍しくありません。
女性のいびき治療で大切なポイント
ホルモン変化・体重増加・筋力低下が複合的に影響する
生活習慣や睡眠姿勢の改善に加え、マウスピース治療やナイトレーズ(レーザー治療)も有効
自覚症状が少なくても、日中の眠気や集中力低下がある場合は専門医への相談を
今日から始められるいびき改善方法
横向き寝で気道を確保する
仰向けで寝ると、舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。
横向きの姿勢で眠ることで、気道が開きやすくなり、いびきを軽減できます。抱き枕やクッションを活用して、自然に横向きをキープできるように工夫しましょう。
体重管理と適度な運動
肥満気味の方は、喉周りのダイエットが効果的です。
体重の増加は舌や喉の脂肪の増加につながり、いびきを引き起こす可能性が高まります。適切な体重を維持することが、いびき対策となります。ウォーキングや趣味のスポーツなど、継続しやすい運動をスタートしてみてください。また、舌を回転させる「舌トレーニング」や、表情筋を動かす「顔トレーニング」など、口周りの筋肉を鍛えることも有効です。
寝る前のアルコールとタバコを控える
寝る前にアルコールを摂ると、喉の筋肉が緩みやすくなり、いびきの原因となります。
アルコールを摂取する場合は、適量を寝る前の4時間前までにしましょう。また、タバコに含まれるニコチンやタールといった有害物質は、気道の粘膜に炎症やむくみを引き起こし、気道を狭くします。喫煙の頻度が多い人ほど気道が狭まりやすいため、禁煙をスタートすることをお勧めします。
口呼吸を改善する
鼻づまりで口呼吸になっている場合は、鼻炎の治療や、鼻腔を広げるテープ、加湿器の利用が有効です。
口呼吸防止テープやマウスピースなども市販されています。ただし、睡眠時無呼吸症候群の方や鼻づまり、アレルギー性鼻炎など鼻の病気を発症している場合は、窒息する恐れがあるので使用を控えるなど、取り扱いには注意が必要です。
女性のいびき治療〜専門医による検査と治療法
セルフケアで改善しないときは専門医へ
生活習慣の見直しや寝姿勢の工夫をしても、いびきが続く場合や、
「朝起きても疲れが取れない」「日中に強い眠気を感じる」といった症状がある場合は、専門医の診察を受けることをおすすめします。
特に女性の場合、いびきの背景にはホルモンバランスの変化やストレス、自律神経の乱れなどが関係していることが多く、
単なる「疲れ」や「更年期症状」と思い込み、受診が遅れてしまうケースが少なくありません。女性の睡眠障害は、体調やメンタルにも大きく影響します。
そのため、女性特有の身体の変化や心理的側面にも配慮できる医療機関を選ぶことが大切です。
女性のいびき治療〜主な検査方法
自宅でできる簡易検査
小型の検査機器を使用し、普段通り自宅で眠りながら呼吸の状態や酸素濃度を測定します。睡眠のリズムを崩さずに検査できるため、忙しい女性の方でも負担が少ないのが特徴です。
病院で行う精密検査(ポリソムノグラフィー)
睡眠の質をより詳しく調べる場合は、病院に一泊して行う検査を行います。
脳波・心拍・呼吸・体位などを記録し、睡眠の深さ・呼吸の乱れ・いびきの程度を詳細に分析します。
女性のいびき治療では「完全に止まる無呼吸」よりも「浅くなる低呼吸」が多く、この違いを明確に把握できます。
鼻・喉・顎の形態検査(内視鏡・CT・セファロ)
鼻や喉の形状、舌の位置、顎の形などをCTや内視鏡で確認します。特に女性の患者さんは、顔や顎の骨格が小さい方が多く、気道が狭くなりやすい骨格的特徴を持つケースもあります。これらの検査により、最適な治療法を科学的に判断します。
女性のいびき治療〜治療法の選択
マウスピース治療
軽度〜中等度のいびき・睡眠時無呼吸には、下顎を前に出すタイプのマウスピースが有効です。睡眠中に気道を確保し、呼吸をスムーズにします。
女性の場合、顎が小さく筋力も男性より弱いため、過度な前方移動を避けた設計が重要です。
当院ではCTやセファロ解析をもとに、顎関節に負担をかけずに快適に装着できるよう調整します。
CPAP(シーパップ)療法
中等度〜重度の睡眠時無呼吸に対しては、CPAPという装置を使って空気を送り、気道の閉塞を防ぎます。最近では、マウスピースとCPAPを併用する「ハイブリッド療法」も効果的とされています。
圧力を下げつつ気道を広げることで、不快感を軽減しながら治療効果を高めます。
ナイトレーズ(レーザー治療)
麻酔不要で痛みが少なく、15〜30分で終了するレーザー治療です。
喉の粘膜を引き締めて気道を広げるため、女性特有の「軽い閉塞型いびき」にも向いています。マウスピースとの併用で相乗効果を発揮し、より自然な呼吸をサポートします。
生活指導・ホルモンバランスのケア
女性のいびきは、ホルモンバランスや体重変化とも深く関わります。
睡眠の質を整えるために、更年期ケア・栄養指導・ストレスマネジメントなどを併せて行うことも重要です。当院では、メンタル面へのサポートも行い、安心して治療を続けられる体制を整えています。
女性の心理面に寄り添ったサポート
女性にとって「いびきを指摘される」ことは、恥ずかしさや不安を伴うデリケートな問題でもあります。当院では、プライバシーを重視した個室環境での診察・検査を行い、女性スタッフがカウンセリングを担当するなど、安心して相談できる体制づくりを大切にしています。
まとめ―快適な睡眠を取り戻すために
女性のいびきは、更年期におけるホルモンバランスの変化、加齢による筋力低下、体重増加など、複数の要因が複合的に影響しています。
特にプロゲステロンの減少は、気道を支える筋肉の働きを弱め、いびきを悪化させる大きな要因となります。いびきは単なる音の問題ではなく、睡眠の質や健康状態に関わる重要なサインです。放置すると、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まり、日中の眠気や疲労感、さらには高血圧や生活習慣病のリスクにもつながります。
まずは、横向き寝、体重管理、アルコールやタバコを控えるなど、今日から始められるセルフケアに取り組んでみてください。口周りの筋肉を鍛える体操も効果的です。それでも改善しない場合は、専門医に相談し、適切な検査と治療を受けることをお勧めします。
いびきや睡眠のことでお悩みの方は、ぜひ東京BTクリニック歯科・医科にお気軽にご相談ください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医

