2025年12月25日

睡眠時無呼吸症候群とCPAP療法の現状
睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が繰り返し起こる疾患です。単なる「いびき」と軽視されがちですが、実は全身の健康に深刻な影響を及ぼす病気なのです。夜間に何度も呼吸が止まることで、体内が低酸素状態に陥り、質の良い睡眠が得られなくなります。
放置すると、糖尿病のリスクは1.5倍、高血圧は2倍、心血管疾患は3倍、脳血管障害は4倍にも上昇します。さらに、突然死や認知症、うつ病のリスクも高まることが分かっています。
CPAP療法の限界と継続の難しさ
CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群の標準治療です。睡眠中にマスクを装着し、圧力をかけた空気を鼻から送り込むことで気道を広げ、無呼吸を防ぎます。適切に使用すれば無呼吸の回数を大幅に減少させることができます。しかし、大きな課題もあります。
継続率の実態
継続率:わずか50%程度
平均使用時間:1晩あたり4.4時間
多くの患者さんが代替治療を希望
つまり、効果があっても半数の方が続けられないのが現実です。
CPAPが続けられない6つの理由
マスクの圧迫感・違和感 – 装着感が苦手
顔の跡が残る – 朝起きるとマスクの跡が気になる
肌トラブル – マスクとの接触部分がかぶれる
機械の音 – パートナーの睡眠を妨げる
持ち運びの不便さ – 出張や旅行に不向き
夜中に外してしまう – 無意識のうちにマスクを取ってしまう
このように、CPAP療法は効果的でも、生活の質や継続性に課題があるのです。
口腔内装置(マウスピース)による治療
マウスピース治療の仕組みと効果
CPAP療法が合わない、または継続が難しい患者さんにとって、口腔内装置(マウスピース)は有効な代替治療の一つです。
この装置は寝る時に口腔内に装着し、下顎を前方に引き出すことで気道を確保する仕組みになっています。下顎を前方に移動させることで、舌根部も前方に引き出され、喉の空気の通り道が拡大します。睡眠時無呼吸症候群の多くは、睡眠中に舌の付け根や喉の柔らかい部分が後方に落ち込んで、気道を塞ぐことで発生するため、マウスピースはこの物理的な閉塞を防ぐ効果があります。
当院のマウスピース装置には主に固定式と可動式の2種類があります。可動式は装着感がより快適で、睡眠中の自然な動きを妨げにくいという利点があります。
治療効果と成功率
適切に調整されたマウスピースを使用した場合、無呼吸低呼吸指数(AHI)が平均して約50%減少することが示されています。AHIを5件/時間未満に低減する成功率は、軽症で55%、中等症で45%、重症で35%です。
マウスピース装置による治療のメリット
装着が簡単で継続しやすい
顔や頭部への負担が少ない
寝返りが打ちやすい
音が出ないため
手入れが簡単
小型・軽量なため出張や旅行にも持っていきやすいという
通院頻度が3~6ヶ月に1回程度と少ない
最新のレーザー治療「ナイトレーズ」
切らない、痛くない新しい治療法として注目されているのが、レーザー治療「ナイトレーズ」です。
ナイトレーズは、軟口蓋や口蓋垂にレーザーを照射し、緩んだ組織を引き締めることで気道を広げます。従来のように「切る手術」ではないため、多くのメリットがあります。
ナイトレーズの特徴として、痛みがない、出血がない、入院不要(日帰り治療・約15分)、ダウンタイムなし(治療後すぐ食事可能)という点が挙げられます。
当院では1ヶ月に1回の来院で計3回の照射を行います。喉の柔らかい部分や口蓋垂(のどちんこ周辺の組織)の組織を引き締めることで、睡眠中の気道閉塞を軽減し、いびきや無呼吸の改善が期待できます。
その他の代替治療法
口腔咽頭運動(お口周辺の筋トレ)
口腔咽頭運動は、舌、軟口蓋、咽頭側壁を動かす等尺性運動と等張性運動のセットで構成されます。
口腔咽頭運動によって睡眠時無呼吸症候群が約30~40%改善できることが示されました。上気道拡張筋は睡眠中に気道を開いたまま保つ上で重要な役割を果たしているため、これらの運動が効果を発揮すると考えられます。
制限事項は、患者さんが運動を頻繁に(1日に2~3回)行う必要があることです。継続的な実施が求められるため、患者さんの自己管理能力が重要となります。
まとめ:CPAP以外の治療法の選択と今後の展望
睡眠時無呼吸症候群の治療には、現在CPAP以外の治療法がいくつか利用可能です。
マウスピース装置
いびき、軽度、中等度、重度の睡眠時無呼吸症候群を患う多くの患者にとって、単純で可逆的、静かで費用効果の高い治療法です。マウスピース装置はCPAPと同等の長期的な効果があり、睡眠の改善、閉塞性無呼吸および低呼吸の軽減、血圧の低下、日中の眠気や生活の質の改善につながるという多くのメリットがあります。
レーザー治療
侵襲性が低く、回復期間が短いという利点があり、軽度から中等度の患者さんに適している可能性があります。
様々な治療法を併用して複数の経路をターゲットにすることも、有望なアプローチの一つです。
治療法の選択にあたっては、症状の重症度、生活スタイル、費用、継続性などを総合的に考慮し、専門医と十分に相談することが重要です。詳しい治療の流れや適応については、一度東京BTクリニック歯科・医科までお気軽にご相談ください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医

