いびき治療に革命をもたらすナイトレーズとは

いびきは単なる音の問題ではなく、睡眠の質を低下させ、さまざまな健康リスクを引き起こす可能性がある症状です。特に重度のいびきは、睡眠時無呼吸症候群（SAS）に発展するリスクもあり、早めの対処が望まれます。

私は長年にわたり、多くのいびき・睡眠時無呼吸症候群の患者さんを診てきました。その経験から言えるのは、患者さん一人ひとりの状態に合わせた適切な治療法の選択が非常に重要だということです。

今回は、痛みや負担が少なく効果的ないびき治療として注目を集めている「ナイトレーズ治療」について、その期間や回数、効果的な治療計画をご紹介します。

ナイトレーズ治療の期間と回数

ナイトレーズ治療は一度で完了するものではなく、複数回のセッションを重ねることで効果を高めていきます。では、具体的にどのくらいの期間と回数が必要なのでしょうか。

標準的な治療スケジュール

ナイトレーズ治療は通常、1ヶ月に1回のペースで3〜6回程度の治療を行います。個人差はありますが、2〜3回目の治療からはっきりとした効果を感じる方が多いです。

治療間隔を1ヶ月程度空けるのは、レーザー照射後のコラーゲン増生と組織の引き締め効果が徐々に現れるため、その効果を見極めながら次の治療を行うためです。

当院では、患者さんの状態に合わせて治療計画をカスタマイズしています。いびきの程度や原因、口腔内の状態によって、必要な回数や間隔は変わってくるからです。

効果の持続期間とメンテナンス

ナイトレーズ治療の効果の持続期間は1〜3年程度と言われています。これは個人差が大きく、生活習慣や体重の変化、加齢などによっても変わってきます。

効果を長く維持するためには、6ヶ月〜1年に一度のメンテナンス治療を受けることをお勧めします。定期的なメンテナンスによって、いびきの再発を防ぎ、良好な睡眠状態を維持することができます。治療は一度で終わりではなく、良い睡眠を維持するための継続的なケアと考えることが大切です。

また、治療効果を最大化し持続させるためには、適切な生活習慣の改善も重要です。体重管理、アルコールや睡眠薬の摂取制限、規則正しい睡眠習慣などを心がけることで、治療効果をサポートできます。

ナイトレーズ治療の流れ

ナイトレーズ治療は、比較的シンプルな流れで進行します。実際の治療がどのように行われるのか、詳しく見ていきましょう。

初診・カウンセリング

まず初めに、詳細な問診と診察を行います。いびきの程度や睡眠の質、日中の眠気の有無など、睡眠に関する様々な症状をお聞きします。また、口腔内の状態を確認し、いびきの原因となっている部位を特定します。

診察結果に基づいて、ナイトレーズ治療が適しているかどうかを判断し、治療計画をご提案します。

治療当日の流れ

治療当日は、まず口腔内を清潔にするために軽いクリーニングを行います。その後、レーザー照射を開始します。口の中から軟口蓋や口蓋垂、舌側などの粘膜にレーザーを照射していきます。照射時間は約15〜30分程度です。

治療中は軽い熱さを感じる程度で、痛みはほとんどなく、麻酔なしで治療が可能です。

治療後の経過と注意点

治療後は、のどの奥に軽い違和感を感じることがありますが、多くの場合1時間程度で解消します。治療当日と翌日は、刺激の強い食べ物やアルコールは控えていただきますが、それ以外は通常通りの食事や日常生活が可能です。

まれに照射部位に口内炎などを引き起こすことがありますが、3〜4日（長くて1週間程度）で改善します。改善しない場合は医師に相談してください。

効果には個人差がありますので、焦らず治療を継続することが大切です。

実際の治療風景

私が模擬患者になった、実際の治療風景です。治療は主に三段階に分けて行われます。

※音量にご注意ください。

余熱

MTS（熱レーザーでのアプローチ）

仕上げ

ナイトレーズ治療の費用と他の治療法との比較

ナイトレーズ治療を検討する際には、費用面も重要な判断材料になります。また、他のいびき治療法と比較することで、ご自身に最適な選択ができるでしょう。

ナイトレーズ治療の費用相場

ナイトレーズ治療の費用は医療機関によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

1回あたりの治療費：約5万円〜11万円
3回コース：約15万円〜30万円
6回コース：約28万円〜60万円
メンテナンス1回：約4万円〜5万円

なお、ナイトレーズ治療は保険適用外の自由診療となるため、全額自己負担となります。また、医療機関によってはモニター価格や割引コースなどを設けている場合もあります。

他の治療法との比較

いびき・睡眠時無呼吸症候群の治療法には、ナイトレーズ以外にもいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

CPAP療法

睡眠時に専用のマスクを装着し、機械で空気を送り込むことで気道を確保する治療法です。効果は高いですが、マスクの装着感や機器の音、毎月のレンタル料金（約5,000円/月）などの負担があります。

マウスピース治療

睡眠時に専用のマウスピースを装着し、下顎を前方に引き出すことで気道を確保する治療法です。当院ではCTやセファロをもちいて精密検査を行い、オーダーメイドのマウスピースを提供しておりますので、顎関節に負担なくご利用いただけます。

外科的手術

口蓋垂口蓋形成術（UPPP）などの手術で気道を広げる治療法です。効果は高いですが、全身麻酔が必要で、術後の痛みや出血、食事制限などのダウンタイムがあります。

ナイトレーズ治療は、これらの治療法と比較して、痛みや負担が少なく、日常生活への影響が最小限に抑えられるという大きなメリットがあります。特に、CPAPの装着が困難な方や、手術に抵抗がある方にとって、有効な選択肢となるでしょう。

ナイトレーズ治療の効果を最大化するための生活習慣

ナイトレーズ治療の効果をさらに高め、長く維持するためには、日常生活での工夫も重要です。以下に、いびき改善に役立つ生活習慣をご紹介します。

私の臨床経験から言えることですが、治療と生活習慣の改善を組み合わせることで、より良い結果が得られることが多いです。

体重管理

肥満はいびきの主要な原因の一つです。特に首周りの脂肪が増えると、気道が狭くなりやすくなります。適正体重の維持を心がけましょう。

BMIが30を超える方は、減量によっていびきが改善することも少なくありません。運動習慣と健康的な食生活、口腔周辺筋力トレーニング（MFT）を取り入れることで、ナイトレーズ治療の効果も高まります。

睡眠姿勢の工夫

仰向けで寝ると、舌が喉の奥に落ち込み、気道を狭くすることがあります。横向きで寝ることで、いびきを軽減できる場合があります。

専用の枕やマットレスを使用したり、テニスボールを背中に縫い付けたTシャツを着るなどの工夫で、仰向け寝を防ぐことができます。

アルコールと睡眠薬の制限

アルコールや睡眠薬は、喉の筋肉を弛緩させるため、気道が狭くなりやすくなります。就寝前のアルコール摂取や睡眠薬の使用は控えめにしましょう。

特に治療期間中は、これらの影響を最小限に抑えることで、治療効果を最大化することができます。

規則正しい睡眠習慣

不規則な睡眠習慣や睡眠不足は、いびきを悪化させることがあります。毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠時間を確保しましょう。

質の高い睡眠は、全身の健康にも良い影響を与えます。睡眠環境の整備も大切です。

よくある質問と回答

最後に、ナイトレーズ治療に関するよくある質問とその回答をまとめました。治療を検討される際の参考にしてください。

Q1: ナイトレーズ治療は痛いですか？

A: ほとんどの方は痛みを感じません。海外の論文によると、40人中39人が痛みを感じなかったと報告されています。レーザー照射時にわずかに温かさを感じる程度です。痛みに敏感な方には、表面麻酔を使用することもできます。

Q2: 治療効果はいつ頃から実感できますか？

A: 個人差がありますが、早い方は1回目の治療後から効果を実感されます。多くの方は2〜3回の治療を重ねる中で、徐々に効果を感じ始めます。治療の効果は蓄積されていくため、焦らず継続することが大切です。

Q3: 治療後の制限はありますか？

A: 治療当日と翌日は、刺激の強い食べ物やアルコールは控えていただきますが、それ以外は通常通りの食事や日常生活が可能です。治療後すぐに仕事に戻ることもできます。

Q4: 効果はどのくらい続きますか？

A: 効果の持続期間は個人差がありますが、一般的には1〜3年程度と言われています。6ヶ月〜1年に一度のメンテナンス治療を受けることで、効果を長く維持することができます。

Q5: 睡眠時無呼吸症候群にも効果‹がありますか？

A: 軽症の閉塞型睡眠時無呼吸症候群（AHI＜15/hr）の方には効果が期待できます。しかし、中等症〜重症の方や、肥満が原因の方には効果が限定的な場合があります。CPAPやマウスピースの併用が推奨されることもあり、適切な診断を受け、状態に合わせた治療法を選択することが重要です。

まとめ：効果的なナイトレーズ治療計画

ナイトレーズ治療は、痛みや負担が少なく、日常生活への影響を最小限に抑えながら、効果的にいびきを改善できる画期的な治療法です。

効果的な治療計画のポイントをまとめると以下のようになります。

治療前に適切な診断を受け、いびきの原因や睡眠時無呼吸の有無・程度を正確に把握する
通常1ヶ月に1回のペースで3〜6回程度の治療を計画的に受ける
効果を長く維持するために、6ヶ月〜1年に一度のメンテナンス治療を受ける
治療と並行して、体重管理、MFTや睡眠姿勢の工夫、アルコール制限などの生活習慣改善を行う

いびきは単なる音の問題ではなく、睡眠の質低下や様々な健康リスクを引き起こす可能性がある症状です。早めの対処が大切です。

当院ではこれらの治療や生活習慣の改善を専門的に行うことで、患者さんひとり一人の快適な睡眠と生活の質の向上に貢献してまいります。

いびき治療でお悩みの方はぜひ、お気軽にご相談ください。

著者情報　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【経歴】　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京歯科大学 総合歯科　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京歯科大学 インプラント専門外来　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　医療法人誠歯会　加藤歯科クリニック　開業　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日本大学松戸歯学部非常勤講師　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【資格・所属学会】　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　日本口腔インプラント学会　専門医