2025年10月23日

骨不足でインプラント治療を諦めていませんか?
「骨が足りないからインプラントはできません」
このように歯科医院で告げられ、インプラント治療を諦めた経験はありませんか?確かに、顎の骨量が不足していると従来のインプラント治療は難しいとされてきました。しかし、歯科医療の技術は日々進化しています。現在では、骨量が不足している方でもインプラント治療を受けられる可能性が大きく広がっているのです。
骨不足の原因は様々です。歯周病による骨の吸収、歯を失ってからの時間経過、加齢による骨密度の低下など、多くの要因が関わっています。しかし、最新の歯科医療技術を活用すれば、こうした課題を克服できるケースが増えています。
1. GBR法(骨再生誘導法)で骨量を増やす
GBR法は、インプラント治療における骨不足問題を解決する代表的な方法です。この技術は、骨が足りない部位に人工骨や自家骨を填入し、特殊な膜で覆うことで骨の再生を促します。
GBR法の最大の特徴は、患者さん自身の治癒力を利用して骨を再生させる点にあります。特殊なコラーゲン膜を使用することで、骨の形成に必要な細胞だけを選択的に集め、不要な軟組織の侵入を防ぎます。これにより、骨が効率よく再生されるのです。
治療の流れとしては、まず局所麻酔を行い、歯肉を切開して骨面を露出させます。次に、人工骨や自家骨を填入し、その上からコラーゲン膜で覆います。最後に歯肉を縫合して手術は完了です。
GBR法のメリット
比較的小さな骨欠損から中程度の骨欠損まで対応できる点です。また、自家骨だけでなく人工骨も使用できるため、患者さんの負担を軽減できます。
GBR法のデメリット
治療期間が長くなることが挙げられます。骨の再生には通常4〜6ヶ月程度かかり、その後インプラントを埋入するため、全体の治療期間は長くなります。また、手術の技術が高度であるため、経験豊富な歯科医師による治療が必要です。
当院では、CTスキャンを用いた精密な診断を行い、患者さん一人ひとりの骨の状態に合わせた最適なGBR治療計画を立てています。これにより、安全で確実な骨再生を実現し、インプラント治療の成功率を高めています。
2. サイナスリフト・ソケットリフトで上顎の骨を増やす
上顎の奥歯部分は、上顎洞と呼ばれる空洞があるため、骨の高さが不足しがちです。特に歯を失ってからの時間が経過すると、骨はさらに吸収され、インプラント治療が難しくなります。
このような上顎の骨不足に対応する技術が、サイナスリフトとソケットリフトです。
サイナスリフト
サイナスリフトは、上顎洞の底を持ち上げ、その空間に骨補填材を入れることで骨の高さを確保する手術です。大きく骨量を増やすことができるため、高度な骨吸収がある場合に適しています。
手術では、歯肉を切開して上顎洞の側壁に小さな窓を開け、上顎洞粘膜を慎重に持ち上げます。その空間に骨補填材を填入し、歯肉を縫合します。骨の形成には約6ヶ月程度かかり、その後インプラントを埋入します。
ソケットリフト
ソケットリフトは、サイナスリフトよりも低侵襲な方法です。インプラントを埋め込む予定の部位から直接アプローチし、上顎洞底の粘膜を持ち上げて骨補填材を填入します。
骨の不足が軽度から中等度の場合に適しており、場合によってはインプラント埋入と同時に行うこともできます。サイナスリフトに比べて手術の侵襲が少なく、回復も早いのが特徴です。
どちらの方法を選択するかは、骨の不足の程度や患者さんの状態によって異なります。当院では、詳細な検査と診断を行い、患者さんに最適な方法をご提案しています。

3. ショートインプラントで骨量不足を克服する
従来のインプラント治療では、十分な骨の高さが必要とされてきました。しかし、近年開発されたショートインプラントは、その名の通り短い長さで設計されており、骨の高さが不足している部位でも使用可能です。
ショートインプラントとは、一般的に8mm以下の長さのインプラントを指します。通常のインプラントが10〜16mm程度であるのに対し、かなり短いことがわかります。
このショートインプラントの最大の利点は、骨造成手術を回避できる可能性があることです。骨の高さが不足している場合でも、既存の骨を最大限に活用してインプラント治療を行うことができます。
ショートインプラントのメリット
治療期間の短縮、外科的侵襲の軽減、コストの削減などが挙げられます。特に骨造成手術に不安を感じる患者さんや、全身疾患などの理由で大きな手術が難しい方にとって、有効な選択肢となります。
ショートインプラントの限界
骨の幅が不足している場合には適用できないことや、噛む力が強く加わる部位では長期的な安定性に懸念があることなどです。また、インプラントが短いため、咬合力に対する力学的な配慮が特に重要になります。
当院の取り組み
患者さんの口腔内の状態を詳細に診査し、ショートインプラントが適しているかどうかを慎重に判断しています。場合によっては、骨造成とショートインプラントを組み合わせるなど、最適な治療計画をご提案しています。
骨の高さが不足していることでインプラント治療を諦めていた方も、ショートインプラントという選択肢があることを知っておくと良いでしょう。
4. 傾斜埋入法で骨の少ない部位にもインプラントを
傾斜埋入法は、骨量が不足している部位でもインプラント治療を可能にする革新的な技術です。従来のインプラント治療では、インプラントを垂直に埋入するのが基本でしたが、この方法では骨の量が多い部位を利用して、インプラントを斜めに埋入します。
特に上顎の奥歯部分では、上顎洞の存在により垂直的な骨の高さが不足しがちです。傾斜埋入法では、上顎洞を避けながら、前方の骨量が豊富な部位を利用してインプラントを斜めに埋入します。
当院では、3DCTによる精密な診断と治療計画に基づき、傾斜埋入法を安全に実施しています。骨不足でインプラントを諦めていた方も、この技術によって治療の可能性が広がっているのです。
5. PRGFを用いた再生医療で骨の治癒を促進
PRGFは「Plasma Rich in Growth Factors(成長因子豊富血漿)」の略で、患者さん自身の血液から抽出した成長因子を活用し、組織の修復を促進する最新の再生医療技術です。
この技術は、患者さんから採取した少量の血液を特殊な遠心分離機にかけ、成長因子が豊富に含まれる血漿成分を分離します。この成分には、組織の修復や再生を促進する様々な成長因子が含まれており、骨造成手術やインプラント埋入時に使用することで、骨の治癒を早め、成功率を高めることができます。
PRGFのインプラント治療への応用
PRGFは、インプラント治療における様々な場面で活用されています。骨造成手術では、骨補填材とPRGFを混合して使用することで、骨の形成を促進します。また、インプラント埋入時にPRGFを使用することで、オッセオインテグレーション(インプラントと骨の結合)の質と速度を向上させることができます。
さらに、PRGFから作製されるフィブリンメンブレン(膜)は、GBR法などで使用する保護膜としても活用できます。患者さん自身の血液から作られるため、拒絶反応のリスクがなく、生体親和性に優れているのが特徴です。
PRGFの最大の特徴
患者さん自身の血液を使用するため、安全性が高いことです。アレルギーや感染症のリスクが極めて低く、生体適合性に優れています。また、治癒を促進する効果があるため、治療期間の短縮にも寄与します。
当院では、最新のPRGF技術を導入し、骨不足の患者さんに対するインプラント治療の成功率向上に努めています。患者さんの血液から抽出した成長因子を活用することで、より安全で効果的な骨再生を実現しています。

骨不足でもインプラント治療を諦める必要はない
ここまで、骨不足の患者さんでもインプラント治療を可能にする5つの最新技術について解説してきました。これらの技術は、それぞれ特徴や適応症が異なりますが、いずれも骨量不足という従来のインプラント治療の壁を乗り越えるための革新的な方法です。
当院では、最新のCT診断技術を用いて患者さんの骨の状態を詳細に把握し、一人ひとりの状況に合わせた最適な治療計画をご提案しています。骨造成が必要な場合も、PRGFなどの再生医療技術を活用することで、より安全で効果的な治療を実現しています。
東京BTクリニックでは、骨不足でお悩みの方に対して、最新の技術と豊富な経験を活かした治療をご提供しています。カウンセリングやセカンドオピニオンのご相談も承っておりますので、お気軽に東京BTクリニック歯科・医科までお問い合わせください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医 日本臨床補綴学会 専門医 日本歯周病学会 認定医 IDIA顎顔面外科矯正 指導医 日本睡眠学会 日本睡眠歯科学会

