2025年9月08日

膝関節の再生医療とは?痛みに悩む方への新たな光
膝の痛みは、日常生活の質を大きく低下させる要因となります。立ち上がる、歩く、階段の昇り降りなど、当たり前の動作が困難になると、生活の喜びが失われていきます。
変形性膝関節症は、そんな膝の痛みの原因として最も多い疾患です。国内の潜在的な患者数は約3,000万人と推定されており、特に高齢者に多く見られます。70歳代では約70%、80歳代では約80%の方が膝の痛みに悩んでいるというデータもあります。
従来の治療法は、保存療法と手術療法の二択でした。保存療法では鎮痛薬の服用やヒアルロン酸注射などが行われますが、症状が進行すると効果が薄れていきます。一方、手術療法は体への負担が大きく、入院やリハビリも必要となります。
「手術は避けたいけれど、保存療法では効果が不十分…」
そんな方々に新たな希望をもたらすのが、再生医療です。再生医療とは、失った組織の再生を促す医療技術であり、変形性膝関節症に対しては、患者さん自身の血液や脂肪を活用した治療法が注目されています。
再生医療の種類と特徴~自己治癒力を高める最新アプローチ
膝関節の再生医療には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
再生医療の大きな魅力は、メスを使わずに治療できること。注射による日帰り治療が可能なため、体への負担が少なく、高齢の方でも受けやすいという特徴があります。
PRP療法~自己血液の力で炎症を抑える
PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)療法は、自分の血液から血小板を豊富に含む成分を抽出し、膝関節に注入する治療法です。血小板には組織の修復を促す成長因子が含まれており、これにより膝の損傷部分の修復や痛みの緩和が期待できます。
自分の血液を使用するため、拒絶反応やアレルギー反応などのリスクが少ないことも大きな特長です。ただし、自己修復力に依存するため、効果には個人差があります。
APS療法~次世代PRPとも呼ばれる先進治療
APS(Autologous Protein Solution:自己タンパク質溶液)療法は、PRPをさらに進化させた治療法です。PRPをさらに脱水処理し、抗炎症成分など関節の健康に関わる成分を抽出したものを患部に注入します。
APS療法の大きな特徴は、1回の治療で持続的な効果が期待できること。欧州での臨床試験では、1回の注入で最大24ヶ月間にわたって痛みの軽減が持続したという報告もあります。
従来の薬物療法やヒアルロン酸注射などの保存療法と、膝を切開する手術とも異なる「第三の治療」として注目されています。
幹細胞治療~自己脂肪由来の間葉系幹細胞
脂肪由来間葉系幹細胞(MSC)治療は、腹部などから採取した脂肪から幹細胞を分離し、膝関節に注入する方法です。幹細胞には抗炎症や鎮痛の作用が認められており、ヒアルロン酸注射のような一時的な効果ではなく、長期的な改善が期待できます。
当初は骨髄から幹細胞を採取する方法が主流でしたが、近年では脂肪由来の幹細胞の方が分離しやすく質も良いことがわかり、注目されています。
膝関節の再生医療が効果を発揮するメカニズム
膝関節の再生医療がなぜ効果を発揮するのか、そのメカニズムを理解することで、治療への期待と安心感が高まります。
変形性膝関節症は、関節軟骨の摩耗や変形によって起こります。軟骨がすり減ると、骨と骨が直接こすれ合うようになり、痛みや炎症を引き起こします。
再生医療の目的は、この損傷した組織の修復を促進し、炎症を抑えることにあります。
成長因子による組織修復の促進
PRPやAPS療法で注入される血小板には、様々な成長因子が含まれています。これらの成長因子は、損傷した組織の修復を促進する働きがあります。
具体的には、血管新生(新しい血管の形成)、細胞増殖の促進、コラーゲン産生の増加などの作用により、軟骨や周囲組織の修復を助けます。
血小板から分泌される成長因子には複数の種類があり、それぞれが異なる役割を持っています。これらが複合的に作用することで、単一の薬剤では得られない総合的な治療効果が期待できるのです。
抗炎症作用による痛みの緩和
特にAPS療法では、膝関節内で炎症を引き起こすタンパク質(IL-1やTNF-αなどの炎症性サイトカイン)のバランスを整える作用があります。これにより炎症が抑えられ、痛みの軽減につながります。
幹細胞治療においても、幹細胞から分泌される様々な因子が抗炎症作用を持ち、痛みの緩和に貢献します。
このように、再生医療は単に痛みを一時的に抑えるだけでなく、組織の修復を促進し、長期的な改善を目指す治療法なのです。
再生医療と従来治療の比較~メリットとデメリット
膝関節の再生医療と従来の治療法には、それぞれメリットとデメリットがあります。ご自身に最適な治療法を選ぶために、しっかりと比較検討することが大切です。
まずは、主な治療法の特徴を表にまとめてみました。
保存療法との比較
保存療法には、薬物療法(鎮痛薬・消炎鎮痛剤)、ヒアルロン酸注射、リハビリテーション、装具療法などがあります。
保存療法のメリットは、低侵襲で費用も比較的安価なこと。一方、デメリットは対症療法であり、進行を止める効果は限定的であることです。
これに対し再生医療は、組織修復を促進する可能性があり、長期的な効果が期待できます。ただし、保険適用外のため費用負担が大きいことがデメリットとなります。
手術療法との比較
手術療法には、関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などがあります。
手術療法のメリットは、進行した症状に対しても効果が期待できること。特に人工膝関節置換術は、重度の変形性膝関節症に対して確立された治療法です。
一方、デメリットは体への負担が大きく、入院やリハビリが必要なこと。また、人工関節の耐用年数や感染症などのリスクも考慮する必要があります。
再生医療は、メスを使わない日帰り治療が可能で、体への負担が少ないことが最大のメリットです。高齢者や手術に不安を感じる方にとって、大きな選択肢となります。
再生医療のメリットとデメリット
再生医療の主なメリットは以下の通りです:
メスを使わない低侵襲な治療
日帰り治療が可能
自己の細胞・血液を使用するため安全性が高い
長期的な効果が期待できる
回復期間が短い
一方、デメリットとしては:
保険適用外で費用負担が大きい
効果には個人差がある
重度の変形には効果が限定的な場合も
実施できる医療機関が限られている
再生医療は万能ではありませんが、適切な症例に対しては、手術を回避しながら症状改善が期待できる治療法と言えるでしょう。
再生医療の適応と効果~どんな方に向いているのか
膝関節の再生医療は、すべての方に同じように効果があるわけではありません。どのような方に適しているのか、効果はどの程度期待できるのかを見ていきましょう。
私は長年にわたり多くの患者さんの治療に携わってきましたが、再生医療の効果を最大化するためには、適切な症例選択が重要だと実感しています。
適応となる症状や状態
再生医療が特に効果を発揮しやすいのは、以下のような方々です:
変形性膝関節症の初期から中期の方
保存療法では効果が不十分な方
手術を避けたい、または手術のリスクが高い方
日常生活での痛みや違和感がある方
スポーツ活動の継続を希望する方
一方、以下のような場合は効果が限定的な可能性があります:
高度な関節変形がある末期の変形性膝関節症
関節の両側に高度な異常がある場合
重度の骨変形や関節の不安定性がある場合
年齢による効果の違い
再生医療の効果は年齢によっても異なります。一般的に、若い方ほど自己修復能力が高いため効果が出やすい傾向がありますが、高齢の方でも十分な効果が期待できるケースは多くあります。
特に80代以上の高齢者では、手術のリスクが高まるため、低侵襲な再生医療が良い選択肢となることがあります。実際、厚生労働省のデータによると、80代以上では膝関節手術の件数が大幅に減少しており、代替治療の需要が高まっています。
あなたはどうですか?膝の痛みで悩んでいませんか?
治療効果の持続期間
再生医療の効果持続期間は、治療法や個人差によって異なります。
PRP療法では一般的に3〜6ヶ月程度の効果が期待できますが、APS療法では欧州での臨床試験で最大24ヶ月間の効果持続が報告されています。
幹細胞治療においても、長期的な効果が期待できるという報告があります。ただし、いずれの治療も永続的な効果を保証するものではなく、症状に応じて追加治療が必要になる場合もあります。
東京BTクリニック歯科・医科のPRGFを用いた再生医療
PRGFとは~自己血液を活用した安全性の高い治療
PRGFは、患者さん自身の血液から抽出した「成長因子」を活用し、組織の修復を促進する治療法です。自己血液を使用するため安全性が高く、回復を早める効果があります。
PRGFは血液中の「成長因子」を抽出し、抗炎症作用に優れているとされています。東京BTクリニックでは、この技術を歯科分野と整形外科分野の両方に応用しています。
血液中の「成長因子」をちゅうが組織の修復を助け、歯科や再生医療で使われます。ご自身の血液なので安全で、回復を早める効果があります。
メスを入れない膝関節機能回復治療
東京BTクリニック歯科・医科では、メスを入れない膝関節症状の改善に特化しており、PRGFを活用した再生医療により、患者自身の細胞で回復を促す先進的な治療を行っています。
この治療は、特に以下のような方に適しています:
メスを入れずに膝関節症状を改善したい方
保存療法で効果が不十分な方
手術に不安を感じる方
早期の回復を希望する方
PRGFを用いた膝関節治療は、変形性膝関節症の痛みや炎症を緩和し、関節機能の改善を目指します。メスを使わない日帰り治療のため、体への負担が少なく、高齢の方でも安心して受けることができます。
東京BTクリニックのDr吉岡はこれまでなでしこジャパンのチームドクターを歴任し、現在キッコーマン総合病院整形外科部長のドクターです。様々な医療機関を受診しても悩みが解消されなかった患者に対して、一貫したサポート体制を整えていることを強みとしています。
再生医療を受ける際の注意点と今後の展望
膝関節の再生医療は魅力的な治療法ですが、受ける際にはいくつかの注意点があります。また、この分野は日々進化しており、今後の展望も見ておきましょう。
医療技術の進歩は目覚ましく、特に再生医療の分野では新たな治療法が次々と開発されています。患者さんにとって選択肢が増えることは喜ばしいことですが、同時に適切な情報収集と判断が重要になります。
医療機関選びのポイント
再生医療を受ける際は、医療機関選びが非常に重要です。以下のポイントを参考にしてください:
再生医療の実績と経験が豊富な医師がいるか
治療内容や費用について明確な説明があるか
治療前の検査や診断が適切に行われるか
治療後のフォローアップ体制が整っているか
患者の状態に合わせた治療計画を提案してくれるか
また、再生医療等提供計画が受理されている医療機関であることも確認しておくとよいでしょう。
費用と保険適用の現状
現在、膝関節の再生医療は保険適用外の自由診療となっています。そのため、治療費は全額自己負担となり、医療機関によって費用は異なります。
一般的な費用の目安としては:
PRP療法:1回あたり5〜15万円程度
APS療法:1回あたり20〜30万円程度
幹細胞治療:30〜100万円程度
再生医療の今後の展望
膝関節の再生医療は今後さらなる発展が期待されています。現在の研究動向としては:
より効果的な成分抽出・濃縮技術の開発
膝以外の関節(足・股・肩など)への応用拡大
他の治療法との併用による相乗効果の検証
長期的な効果を高める投与方法や頻度の最適化
また、2025年現在、変形性膝関節症に対するPRP膝関節注射の治験が行われるなど、エビデンスの構築も進んでいます。
再生医療は、手術療法と保存療法の間を埋める「第三の治療」として、今後ますます重要な位置を占めていくでしょう。
まとめ~膝の痛みに悩む方へのメッセージ
膝関節の再生医療について、その種類や特徴、メリット・デメリット、適応と効果などを詳しく見てきました。最後に、膝の痛みに悩む方へのメッセージをお伝えします。
変形性膝関節症は、適切な治療を受けなければ症状が進行していきます。しかし、再生医療の登場により、保存療法と手術療法の間を埋める新たな選択肢が生まれました。
再生医療の主な特徴をまとめると:
メスを使わない低侵襲な治療
自己の血液や細胞を使用するため安全性が高い
日帰り治療が可能で体への負担が少ない
組織修復を促進し、長期的な効果が期待できる
特に、高齢の方や手術に不安を感じる方にとって、再生医療は大きな希望となります。80代以上の方では手術リスクが高まるため、低侵襲な再生医療が良い選択肢となることがあります。
膝の痛みは放置せず、早めに専門医に相談することが大切です。症状が軽いうちに適切な治療を始めることで、重症化を防ぎ、QOL(生活の質)を維持することができます。
東京BTクリニック歯科・医科では、PRGFを用いた先進的な再生医療を提供しています。メスを入れない膝関節症状の改善に特化しており、患者さん一人ひとりに合わせた治療を行っています。
膝の痛みに悩んでいる方、手術は避けたいけれど効果的な治療を受けたい方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの膝の状態に合わせた最適な治療法をご提案いたします。
痛みのない生活を取り戻し、活動的な毎日を過ごすための第一歩を、今踏み出してみませんか?
詳細については、東京BTクリニック歯科・医科のウェブサイトをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医 日本臨床補綴学会 専門医 日本歯周病学会 認定医 IDIA顎顔面外科矯正 指導医 日本睡眠学会 日本睡眠歯科学会