2025年9月08日

膝関節痛の再生医療とは?最新の治療アプローチを解説
膝の痛みでお悩みの方は少なくありません。特に階段の上り下りや長時間の歩行で痛みが増す場合、膝関節内部に炎症が生じている可能性があります。
変形性膝関節症をはじめとする膝の痛みに対して、従来は消炎鎮痛剤やヒアルロン酸注射、そして症状が進行した場合には人工関節置換術などの外科的治療が主流でした。しかし近年、患者様の身体への負担が少なく、回復も早い「再生医療」が新たな治療選択肢として注目を集めています。
再生医療は、患者様自身の血液や脂肪から抽出した成分を活用し、体が本来持つ自然治癒力を最大限に引き出す治療法です。メスを入れることなく、関節機能の回復を目指せる点が大きな魅力となっています。
膝関節痛に対する再生医療の種類と特徴
膝関節痛に対する再生医療には、いくつかの種類があります。それぞれ特徴が異なりますので、詳しく見ていきましょう。
PRP(多血小板血漿)療法
PRP療法は、患者様自身の血液から血小板を濃縮した液体成分を抽出し、それを膝関節内に注入する治療法です。血小板には損傷部位に集まり、サイトカインや成長因子を放出することで組織の炎症を改善し、修復を促す働きがあります。
この治療法の特徴は、自分の血液を使用するため安全性が高く、外来で受けられる手軽さにあります。ただし、効果を実感するためには複数回の治療が必要なケースが多いです。
APS(自己タンパク質溶液)療法
APS療法は、PRP療法をさらに発展させた治療法です。患者様の血液を特殊な処理で高濃度に濃縮し、関節向けに特化させたものを注入します。炎症を引き起こす原因物質のバランスを整え、症状を軽減する効果が期待できます。
PRP療法と比較して、一度の治療で十分な効果が期待できるのが大きな特徴です。ただし、治療費はPRP療法よりも高額になる傾向があります。
成長因子療法
成長因子療法は、PRPの血小板の殻を取り除き、細胞成分を除去して成長因子のみを高濃度で抽出し、関節に注射する治療法です。APSと同様に1回の治療で効果が期待できますが、細胞成分を除去しているため、注射後の痛みや腫れといった副作用がほとんどないのが特徴です。
まとめて2回分など一気に注射することも可能で、患者様の状態に合わせた柔軟な治療計画が立てられます。
幹細胞治療
幹細胞治療は、体内から少量の脂肪や滑膜を取り出し、そこに含まれる幹細胞を培養して膝関節内に注入する治療法です。幹細胞は「細胞の赤ちゃん」とも呼ばれ、さまざまな細胞に変化する可能性を秘めています。
特に脂肪由来の幹細胞には、脂肪だけでなく骨や軟骨、血液、神経などの細胞に変化する能力があり、再生医療への実用化が進んでいます。ただし、幹細胞の投与で軟骨や骨が再生するという確実な報告はまだありませんが、炎症や痛みを抑える長期的な効果が報告されています。
膝関節痛の再生医療にかかる費用相場
再生医療は現在、自由診療(保険適用外)となっているため、治療費は全額自己負担となります。各治療法の費用相場を見ていきましょう。
PRP療法の費用
PRP療法は比較的手軽に受けられる再生医療で、1回あたりの費用は3万円〜10万円程度です。ただし、効果を実感するためには複数回の治療が必要なケースが多く、3〜5回のコースで10万円〜30万円程度かかることが一般的です。
クリニックによっては、複数回のコース料金を設定しているところもあり、一括で申し込むことで割引が適用される場合もあります。
APS療法・成長因子療法の費用
APS療法や成長因子療法は、PRP療法よりも高度な処理を行うため、費用も高くなります。1回あたり15万円〜30万円程度が相場です。ただし、1回の治療で効果が期待できるため、トータルコストではPRP療法と大きな差がない場合もあります。
また、治療効果の持続期間も比較的長いため、長期的な視点で考えると費用対効果は高いと言えるでしょう。
幹細胞治療の費用
幹細胞治療は再生医療の中でも特に高度な技術を要するため、費用も高額になります。脂肪由来の培養幹細胞治療の場合、1回あたり100万円〜150万円程度が相場です。
ただし、幹細胞治療は効果の持続期間が長く、場合によっては数年間効果が持続することもあります。そのため、長期的な視点で見ると、他の治療法と比較して必ずしも高コストとは言えない場合もあります。
このように、再生医療の費用は治療法によって大きく異なります。また、同じ治療法でもクリニックによって料金設定が異なる場合がありますので、治療を検討される際は複数のクリニックで相談されることをお勧めします。
膝関節痛の再生医療の効果と期待できる改善
膝関節痛に対する再生医療は、どのような効果が期待できるのでしょうか。実際の臨床データや患者様の声から見ていきましょう。
痛みの軽減と日常生活の質の向上
再生医療の最も顕著な効果は、膝の痛みの軽減です。特に変形性膝関節症による痛みに対して、多くの患者様が治療後に痛みの軽減を実感されています。
ひざ関節症クリニックの調査によると、再生医療を受けた患者様の多くが、痛み・症状・日常生活・スポーツ活動・生活の質の5つの視点で改善を実感しているとのことです。特に、階段の上り下りや長時間の歩行など、日常生活での動作が楽になったという声が多く聞かれます。
ただし、効果の現れ方には個人差があり、治療後すぐに効果を実感する方もいれば、数週間から数ヶ月かけて徐々に改善していく方もいます。
関節機能の改善と長期的な効果
再生医療は単に痛みを抑えるだけでなく、関節機能の改善も期待できます。特に幹細胞治療では、炎症を抑える作用と痛みを軽減させる成分を作る作用があるとされており、長期的な効果が期待できます。
海外の医学専門誌に掲載された臨床結果では、培養した脂肪幹細胞の投与によって、重度の変形性膝関節症に伴う痛みと関節機能が改善したという報告もあります。
また、軟骨の保護や状態の維持が期待できるため、病気の進行スピードを遅らせる効果も望めます。これは、従来の治療法にはない再生医療の大きな特徴と言えるでしょう。
症状の重症度と治療効果の関係
再生医療の効果は、症状の重症度によっても異なります。ひざ関節症クリニックの研究結果によると、変形性膝関節症の初期段階(KL分類でKL2〜KL3)の患者様の方が、末期(KL4)の患者様よりも高い改善効果が得られる傾向にあります。
これは、軟骨がまだ残っている初期〜中期の患者様では、痛みの軽減や関節機能の改善が報告されているのに対し、軟骨が完全に消失した末期の場合、再生医療で軟骨を新たに作ることは難しく、効果が限定的になる可能性があるためです。
ただし、末期の患者様でも炎症を抑える効果は期待できるため、痛みの軽減には役立つ場合があります。
膝関節痛の再生医療のメリットとデメリット
膝関節痛の再生医療には、さまざまなメリットとデメリットがあります。治療を検討される際の参考にしていただければと思います。
再生医療のメリット
再生医療の最大のメリットは、患者様自身の組織や細胞を使用するため、安全性が高いことです。アレルギー反応や拒絶反応のリスクが極めて低く、安心して治療を受けることができます。
また、メスを入れない治療法であるため、手術に比べて身体への負担が少なく、回復も早いのが特徴です。入院の必要もなく、治療後すぐに日常生活に戻ることができます。
さらに、単に痛みを抑えるだけでなく、組織の修復を促進する効果も期待できるため、長期的な改善が見込めます。従来の治療法では難しかった、病気の進行を遅らせる効果も期待できるのは大きなメリットです。
再生医療のデメリット
一方で、再生医療にはいくつかのデメリットもあります。最も大きなデメリットは、自由診療のため治療費が高額になることです。保険適用外のため、全額自己負担となります。
また、効果には個人差があり、すべての方に同じように効果があるわけではありません。特に症状が進行している場合は、効果が限定的になる可能性があります。
さらに、治療効果の持続期間にも個人差があり、効果を維持するためには定期的な治療が必要になる場合もあります。特にPRP療法などは、複数回の治療が必要なケースが多いです。
再生医療の保険適用の見通し
現在、膝関節痛に対する再生医療は自由診療となっていますが、将来的には保険適用される可能性もあります。ただし、保険適用されるためには、国からの認可が必要であり、その審査には長い時間がかかります。
最先端の医療技術をすぐに治療に役立てる場合、保険が利かない状態で提供されることになりますが、安全性と有効性が確立されれば、将来的には保険適用される可能性も考えられます。
ただし、現時点では具体的な保険適用の時期は明確になっていませんので、当面は自由診療として継続されると考えられます。
膝関節痛の再生医療を検討する際のポイント
最後に、膝関節痛の再生医療を検討される際のポイントをいくつかご紹介します。
事前検査の重要性
再生医療の効果は、膝の状態によって大きく異なります。そのため、治療を受ける前に、MRIなどの画像検査で膝の状態を詳しく調べることが重要です。
特に、軟骨の残存状態や炎症の程度、関節の変形具合などを確認することで、再生医療の効果が期待できるかどうかを判断することができます。
ひざ関節症クリニックなど、再生医療を専門とするクリニックでは、MRI検査を事前に行い、効果が見込める方にだけ治療をおすすめしているところもあります。
医療機関選びのポイント
再生医療を受ける際は、信頼できる医療機関を選ぶことが重要です。以下のポイントを参考にしてください。
まず、再生医療の実績が豊富なクリニックを選ぶことが大切です。症例数が多いほど、さまざまなケースに対応した経験があり、安心して治療を受けることができます。
また、医師の専門性も重要なポイントです。整形外科専門医など、膝関節に関する専門知識を持った医師が在籍しているかどうかを確認しましょう。
さらに、アフターフォローが充実しているかどうかも重要です。再生医療は治療後のケアも効果を左右する要素となりますので、治療後のサポート体制が整っているクリニックを選ぶことをお勧めします。
東京BTクリニック歯科・医科のPRGFを用いた再生医療
PRGFとは?膝関節痛治療への応用
PRGFとは「Plasma Rich in Growth Factors(成長因子豊富血漿)」の略で、患者様
自身の血液から抽出した「成長因子」を活用し、組織の修復を促進する治療法です。自己血液を使用するため安全性が高く、回復を早める効果があります。
当院では、このPRGF技術を歯科分野だけでなく、整形外科分野、特に膝関節痛の治療にも応用しています。メスを入れない膝関節症状の改善に特化しており、患者様自身の細胞で回復を促す先進的な治療を行っています。
PRGFは単なるPRP療法とは異なり、より高度な処理を行うことで、効果的に成長因子を抽出・活用することができます。そのため、組織の修復促進効果がより高く、回復も早いのが特徴です。
東京BTクリニックの特徴と治療アプローチ
膝関節痛の治療においても、単に痛みを取り除くだけでなく、根本的な原因にアプローチし、長期的な改善を目指す治療を提供しています。特に、メスを入れずに膝関節症状を改善したい方に適した治療法です。
東京BTクリニックのDr吉岡はこれまでなでしこジャパンのチームドクターを歴任し、現在キッコーマン総合病院整形外科部長のドクターです。
また、これまでさまざまな医療機関を受診しても悩みが解消されなかった患者様に対して、一貫したサポート体制を整えていることも大きな特徴です。
治療後のケアと生活習慣の改善
再生医療の効果を最大限に引き出すためには、治療後のケアも重要です。医師の指示に従い、適切なリハビリテーションや運動を行うことで、より高い効果が期待できます。
また、膝への負担を軽減するために、体重管理や正しい姿勢の維持、適切な運動習慣の確立なども大切です。特に肥満は膝への負担を増加させる大きな要因となりますので、適正体重の維持を心がけましょう。
さらに、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントについては、効果に関する科学的根拠は限定的であり、再生医療の代わりにはならないことを理解しておく必要があります。
まとめ:膝関節痛の再生医療の可能性と将来展望
膝関節痛に対する再生医療は、従来の治療法にはない新たな可能性を秘めています。メスを入れずに膝の機能改善を目指せる点や、自己組織を使用するため安全性が高い点など、多くのメリットがあります。
ただし、現時点では自由診療となっているため費用面での負担が大きいこと、効果には個人差があることなど、いくつかの課題もあります。
重要なのは、自分の膝の状態をしっかりと把握し、適切な治療法を選択することです。特に、再生医療は症状が軽度〜中等度の段階で受けることで、より高い効果が期待できることがわかっています。
東京BTクリニック歯科・医科では、PRGFを用いた先進的な再生医療を提供しており、メスを入れずに膝関節症状の改善を目指す方に適した治療を行っています。膝の痛みでお悩みの方は、まずは専門医に相談してみることをお勧めします。
再生医療は今後もさらなる発展が期待される分野です。研究が進み、より効果的な治療法が開発されることで、将来的には多くの方が手軽に再生医療の恩恵を受けられるようになるでしょう。
膝の痛みでお悩みの方は、ぜひ東京BTクリニック歯科・医科にご相談ください。患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療プランをご提案いたします。詳細は東京BTクリニック歯科・医科の公式サイトをご覧ください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医 日本臨床補綴学会 専門医 日本歯周病学会 認定医 IDIA顎顔面外科矯正 指導医 日本睡眠学会 日本睡眠歯科学会