2025年8月29日

いびきや睡眠時無呼吸症候群でお悩みの方は少なくありません。パートナーからいびきを指摘されて困っている方、睡眠の質が悪く日中の活動に支障をきたしている方など、その悩みは深刻です。
従来のいびき治療といえば、CPAPという装置を装着する対症療法や、メスを使った外科手術が一般的でした。しかし近年、痛みがほとんどなく、日帰りで受けられる画期的な治療法が注目を集めています。
それが「ナイトレーズ」と呼ばれる最新のレーザー治療です。
この記事では、歯科医師として多くの患者さんの睡眠の悩みに向き合ってきた私が、ナイトレーズ治療の仕組みや効果、メリット・デメリットについて詳しく解説します。いびきや睡眠時無呼吸症候群に悩む方々にとって、新たな希望となる情報をお届けします。

ナイトレーズとは?いびき・睡眠時無呼吸症候群の最新治療法
ナイトレーズは、いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる最新のレーザー治療法です。
従来のいびき治療では、喉の奥の「口蓋垂(こうがいすい)」や「軟口蓋(なんこうがい)」と呼ばれる部分をメスやレーザーで切除する外科的な手術が必要でした。これに対してナイトレーズは、レーザーの熱による刺激でコラーゲンを増生させ、いびきの原因となる喉の組織を切除することなく縮小させる治療法なのです。
私は長年、歯科医療の現場でいびきや睡眠時無呼吸症候群に悩む患者さんと向き合ってきました。多くの患者さんが「CPAPが合わない」「手術は怖い」といった理由で、効果的な治療を受けられずにいました。
そんな方々にとって、ナイトレーズは画期的な選択肢となります。痛みがほとんどなく、日帰りで受けられ、治療後すぐに食事も可能という患者さんにやさしい治療法なのです。
ナイトレーズ治療の仕組み
ナイトレーズ治療では、「Er:YAG(エルビウムヤグ)レーザー」と呼ばれる特殊なレーザーを使用します。
このレーザーは、口腔内の軟口蓋や口蓋垂、舌側に照射されます。レーザーの熱エネルギーにより、組織内のコラーゲンが増生し、緩んだ軟部組織が引き締まるのです。
具体的には、レーザー照射によって深さ500μmのUpper Dermis Layerを61〜63℃まで加熱します。この熱刺激によって組織にコラーゲンが増生し、いびきの原因となる喉の口蓋垂と口蓋弓(舌まわりの組織)、舌側を切除することなく縮小させ、いびきの発生を抑制するのです。
治療時間は1回あたり約15〜30分程度で、通常3〜6回のセッションを4週間ごとに受けることで効果を得られます。
従来のいびき治療との違い
従来のいびき治療と比較すると、ナイトレーズには多くの利点があります。
一般的ないびき治療であるCPAP療法は、鼻や口に装置を装着して睡眠する必要があり、多くの方が不快感から継続使用を断念してしまいます。また、毎月のレンタル料金が約5,000円(年間約6万円)かかり続けるという経済的負担もあります。
外科的手術では、メスやレーザーで口蓋垂や軟口蓋を切除するため、術後の痛みや出血、数週間にわたる食事制限などのダウンタイムが避けられません。また、手術費用は総額で約20万円ほどかかります。
これに対してナイトレーズは、切開手術と違い痛みがほとんどなく、麻酔も不要です。治療後すぐに食事も可能で、日常生活への影響が最小限に抑えられます。料金も初回が約3万円ほどで、3回ほどの治療で完了する方もいるため、CPAPの年間費用と同程度で根本治療が可能な場合もあります。

ナイトレーズ治療の特徴とメリット
ナイトレーズ治療には、従来のいびき治療にはない多くの特徴とメリットがあります。
私のクリニックでナイトレーズ治療を受けた患者さんからは、「こんなに痛くないなんて驚いた」「治療後すぐに普通に食事ができて助かった」といった声をよく聞きます。実際に治療を体験した方々の反応からも、その優位性がうかがえます。
痛みがほとんどない
ナイトレーズ治療の最大の特徴は、痛みがほとんどないことです。
海外の論文によると、40人中39人が痛みを感じなかったと報告されています。レーザー照射時にわずかに温かさを感じる程度で、麻酔なしでも十分耐えられる刺激です。
これは従来の切開手術とは大きく異なる点です。切開手術では局所麻酔が必要で、術後も数日間〜数週間にわたり痛みが継続します。
麻酔が不要
ナイトレーズ治療では、痛みがほとんどないため麻酔が不要です。
麻酔注射の痛みや、麻酔による不快感・副作用の心配がありません。治療中は意識のある状態で会話もしながら進められるため、リラックスして治療を受けることができます。
歯科治療や医療処置に恐怖心を持つ方でも、比較的抵抗感なく受けられる治療法と言えるでしょう。
出血がない
ナイトレーズ治療では、軟口蓋や口蓋垂を切除しないため、出血がありません。
レーザーの熱作用で軟部組織を引き締めるだけなので、メスで組織を傷つける必要がなく、安全性が高いのが特徴です。口蓋垂(のどちんこ)も切り取らないため、出血リスクはほぼゼロと言えます。
術後に喉が出血してつばを吐く、といった心配もありません。
治療後すぐに食事が可能
ナイトレーズ治療の大きなメリットとして、治療直後から通常の食事が可能な点が挙げられます。
従来のいびき治療手術(レーザー手術含む)では、術後しばらくは喉の強い痛みで通常の食事が困難になり、流動食などに制限されることがありました。
一方、ナイトレーズ治療では、治療当日は刺激物の摂取を控える程度で、基本的には通常通りの食事が可能です。仕事や日常生活への影響を最小限に抑えられるのは、患者さんにとって大きなメリットです。
ナイトレーズ治療の効果と適応
ナイトレーズ治療は、いびきや軽度の睡眠時無呼吸症候群に効果を発揮します。しかし、すべての方に同じように効果があるわけではありません。
私の臨床経験からも、患者さんの状態によって効果の出方には個人差があることを実感しています。治療前の適切な診断と、個々の状態に合わせた治療計画の立案が重要です。
ナイトレーズ治療の効果
ナイトレーズ治療の効果については、科学的な研究結果も報告されています。
Er:YAG(エルビウムヤグ)レーザーによる治療がいびきの軽減に効果があるか調べたシステマティックレビュー(質の高い論文をくまなく調査しデータを分析する手法)によれば、いびきの改善がみられ、患者満足度の割合が80%であったと報告されています。
実際の治療では、早い方は治療直後よりいびきや呼吸の改善効果を実感できることもあります。効果の持続期間は個人差がありますが、一般的には1年から3年程度とされています。
適応となる方
ナイトレーズ治療が特に効果的なのは、以下のような特徴を持つ方です。
非肥満体型(BMI<30kg/m2)の方
軽症の閉塞型睡眠時無呼吸(AHI<15/hr)の方
口蓋垂が太くて長い方
軟口蓋低位の方
単純性いびき症の方
CPAPが合わない・使い続けられない方
外科的手術に抵抗がある方
研究報告によると、非肥満体型と軽症の閉塞型睡眠時無呼吸の条件がある場合には、レーザー治療(ナイトレーズ)はいびきの軽減に効果があるという結果が報告されています。
効果が出にくい方
一方で、以下のような方には効果が出にくい可能性があります。
高度肥満(BMI≧30)の方
中等症~重症の睡眠時無呼吸症候群(AHI>15/hr)の方
鼻疾患(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など)によるいびきの方
扁桃腺肥大が原因のいびきの方
肥満体型のある人に対して、いびき軽減の効果が確実にあるとは言えません。WHO基準の肥満(BMI>30kg/m2)がある場合、あるいは中等症~重症の睡眠時無呼吸(AHI>15/hr)に該当する場合、レーザー治療の効果および長期予後については不明な点もあります。
いびき軽減を目的としてレーザー治療を受ける場合は、術前の睡眠呼吸障害の重症度と肥満度を把握すること、上気道の閉塞部位を特定することが大切です。

ナイトレーズ治療の流れ
ナイトレーズ治療は、比較的シンプルな流れで進行します。
私のクリニックでは、患者さん一人ひとりの状態に合わせた丁寧な診察とカウンセリングを行い、最適な治療計画を立てています。治療の各ステップについて詳しく見ていきましょう。
初診・カウンセリング
まず初めに、詳細な問診と診察を行います。
いびきの程度や睡眠の質、日中の眠気の有無など、睡眠に関する様々な症状をお聞きします。また、口腔内の状態を確認し、いびきの原因となっている部位を特定します。
必要に応じて、いびきや睡眠時無呼吸の程度を客観的に評価するために、スマートフォンアプリを使ったいびき測定や、自宅で行える簡易睡眠検査などを実施することもあります。
診察結果に基づいて、ナイトレーズ治療が適しているかどうかを判断し、治療計画をご提案します。重度の睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠専門医への紹介も検討します。
治療当日の流れ
治療当日は、まず口腔内を清潔にするために軽いクリーニングを行います。
その後、レーザー照射を開始します。口の中から軟口蓋や口蓋垂、舌側などの粘膜にレーザーを照射していきます。照射時間は約15〜30分程度です。
治療中は軽い熱さを感じる程度で、痛みはほとんどなく、麻酔なしで治療が可能です。
治療後の経過と注意点
治療後は、のどの奥に軽い違和感を感じることがありますが、多くの場合1時間程度で解消します。
治療当日と翌日は、刺激の強い食べ物やアルコールは控えていただきますが、それ以外は通常通りの食事や日常生活が可能です。
まれに照射部位に口内炎などを引き起こすことがありますが、3〜4日(長くて1週間程度)で改善します。改善しない場合は医師に相談してください。
ナイトレーズ治療は通常、1ヶ月に1回のペースで3〜6回程度の治療を行います。個人差はありますが、2〜3回目の治療からはっきりとした効果を感じる方が多いです。
効果の持続期間は1〜3年程度ですが、6ヶ月〜1年に一度のメンテナンス治療を受けることで、効果を長く維持することができます。
ナイトレーズ治療の費用と注意点
ナイトレーズ治療を検討する際には、費用や注意点についても理解しておくことが大切です。
私は患者さんに対して、治療のメリットだけでなく、限界や注意点についても正直にお伝えするようにしています。期待値を適切に設定することで、治療結果に対する満足度も高まるからです。
ナイトレーズ治療の費用
ナイトレーズ治療の費用は医療機関によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
初回トライアル:約1.9万円〜2.2万円
1回あたりの治療費:約8万円〜11万円
3回コース:約18万円〜30万円
6回コース:約28万円〜58万円
メンテナンス1回:約2.3万円〜4.8万円
なお、ナイトレーズ治療は保険適用外の自由診療となるため、全額自己負担となります。また、医療機関によってはモニター価格や割引コースなどを設けている場合もあります。
治療の注意点とリスク
ナイトレーズ治療は比較的安全な治療ですが、いくつかの注意点やリスクがあります。
レーザーを照射したことにより、喉の粘膜が一時的に炎症を起こし、喉風邪のような症状(喉の腫れやイガイガ感)を感じることがあります。
症状が一時的に悪化(いびきの音が大きくなる)する場合もありますが、通常1〜2日でおさまります。
まれに口内炎症状を起こす場合もありますが、これも通常は数日で改善します。
効果には個人差があり、すべての方に同じように効果があるわけではありません。
治療効果の持続期間にも個人差があります。
他の治療法との比較
いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療法には、ナイトレーズ以外にもいくつかの選択肢があります。
CPAP療法:睡眠中に装着する装置で、気道が塞がらないようにする対症療法。毎月のレンタル料金が約5,000円(年間約6万円)かかり続ける。
マウスピース:就寝時に装着し、下顎を前方に出して気道を確保する装置。歯科医院で作製する。
外科手術:口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)やレーザー口蓋垂手術(LAUP)など。痛みや出血を伴い、回復に時間がかかる。
どの治療法が最適かは、いびきの原因や睡眠時無呼吸の重症度、体型、生活習慣などによって異なります。専門医との相談の上で、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
まとめ:ナイトレーズ治療で快適な睡眠を
ナイトレーズは、いびきや軽度の睡眠時無呼吸症候群に対する画期的な治療法です。
痛みがほとんどなく、麻酔も不要で、治療後すぐに食事も可能という患者さんにやさしい特徴を持っています。レーザーの熱刺激によってコラーゲンを増生させ、いびきの原因となる喉の組織を切除することなく縮小させる、新しいアプローチの治療法です。
システマティックレビューでは、いびきに対して80%の方に効果があったと報告されており、特に非肥満体型で軽症の閉塞型睡眠時無呼吸の方に効果的です。
ただし、高度肥満の方や中等症〜重症の睡眠時無呼吸症候群の方、鼻疾患が原因のいびきの方には効果が出にくい可能性もあります。治療前の適切な診断と、個々の状態に合わせた治療計画の立案が重要です。
いびきや睡眠時無呼吸症候群は、単なる音の問題ではなく、睡眠の質の低下や心臓発作、脳卒中リスクの上昇にもつながる可能性のある健康問題です。放置せずに適切な治療を受けることで、あなたとパートナーの快適な睡眠と健康を取り戻しましょう。
当院では、一人ひとりの状態に合わせた最適な治療プランをご提案しています。いびきや睡眠時無呼吸症候群でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
詳細は東京BTクリニック歯科・医科のホームページをご覧いただくか、お電話またはWEBよりお気軽にお問い合わせください。
著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医 日本臨床補綴学会 専門医 日本歯周病学会 認定医 IDIA顎顔面外科矯正 指導医 日本睡眠学会 日本睡眠歯科学会