2026年1月23日

骨が少なくてもインプラント治療は可能です
「骨が足りないのでインプラント治療はできません」と言われた経験はありませんか?
実は、そのような診断を受けた方でも、適切な骨造成技術を用いることで、インプラント治療を受けられる可能性があります。特に上顎の奥歯を失った部分では、上顎洞という空洞が存在するため、骨の厚みが不足しているケースが多く見られます。しかし、現代の歯科医療では「上顎洞底挙上術(サイナスリフト)」という技術により、骨が少ない方でもインプラント治療が可能になっています。
さらに近年では、患者さん自身の血液から抽出した成長因子を活用する「PRGF(血漿成長因子)」という再生医療技術が注目されています。この技術を上顎洞底挙上術と組み合わせることで、より安全で効果的な治療が実現できるようになりました。本記事では、長年インプラント治療と再生医療に携わってきた経験から、骨が少ない方への最新治療法について詳しく解説します。
なぜ上顎の骨が不足するのか
上顎の奥歯を失うと、時間の経過とともに骨が痩せていきます。
歯があるとき、歯の根がかむ力を骨に伝えることで、あごの骨は「使われている」と認識し、健康な状態を保ちます。
しかし、歯を失うと根がなくなり、骨に刺激が伝わらなくなります。
その結果、骨は少しずつ吸収されていき、次第に薄くなっていくのです。
特に上あご(上顎)は、もともと骨が薄く、その上には「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞が存在します。骨が減るとこの空洞が下に広がり、インプラントを入れるための骨の厚み(高さ)が足りなくなってしまいます。
骨不足の主な原因
| 原因 | 説明 |
|---|---|
| 歯を失ってから放置している | 長い間歯がないままだと、骨に刺激がなくなり、自然に痩せていく。 |
| 歯周病(歯ぐきの病気) | 炎症によって歯を支える骨が溶けてしまい、歯を失う前から骨が減っていることも。 |
| 加齢 | 年齢とともに骨の新陳代謝が低下し、骨の再生力が弱まる。 |
| 事故やケガ | 外傷で歯と一緒に骨が損傷してしまうことがある。 |
骨が減るとどうなるの?
骨が少なくなると、
インプラントを埋めるための支えが足りない
骨移植やサイナスリフト(上顎洞底挙上術)PRGFなどの追加治療が必要になる
といった問題が起こります。
つまり、「歯を失ったまま放置しない」ことが最も大切です。早めに治療を行うことで、骨の減少を防ぎ、将来的にインプラントを安全に行える可能性が高まります。
上顎洞底挙上術(サイナスリフト)とは
上の奥歯の部分は、もともと骨が薄く、歯を失ったあとに骨が減りやすい場所です。そのため、インプラントを埋めるための「骨の高さ」が足りなくなることがあります。このような場合に行うのが、上顎洞底挙上術(じょうがくどうていきょじょうじゅつ)、通称「サイナスリフト」と呼ばれる治療です。
サイナスリフト
上あごの骨の側面に小さな穴(窓のような空間)を作り、その奥にある上顎洞(鼻の奥にある空洞)の膜をやさしく持ち上げ、できたすき間に「骨のもと(骨補填材)」を入れます。
この骨補填材が時間とともに自分の骨に置き換わり、インプラントを支えるために十分な骨の厚みができるのです。
ポイント
骨の厚さが5mm以下しかない方でも、この方法ならインプラントが可能になるケースが多いのが特徴です。
サイナスリフトによる治療の流れ
歯ぐきを切開して上顎の骨を露出
骨の側面に小さな“窓”を開ける
上顎洞の膜(シュナイダー膜)を慎重に持ち上げる
そのすき間に骨補填材を注入
骨が安定した後にインプラントを埋める
骨補填材は一般的には、ウシ由来の骨(Bio-Oss)や人由来の移植材(Puros)などが使われます。骨の再生には数ヶ月かかり、6ヶ月ほどで新しい骨がしっかりと形成されます。
PRGF再生医療を併用することでより安全に
当院では、骨の再生をサポートするためにPRGF療法を併用しています。
PRGF(ピーアールジーエフ)とは、患者さん自身の血液から抽出した血小板とその中に含まれる成長因子および血漿成分を活用した体に優しい再生医療です。
この成長因子には、傷の治りを早める・炎症を抑える・骨の再生を促すといった働きがあります。
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 骨の再生を促す | 成長因子が骨を作る細胞を活性化し、骨の形成をサポート。 |
| 治りを早める | 炎症を抑え、痛みや腫れを軽減。治癒期間を短縮。 |
| 安全性が高い | 自分の血液を使うため、アレルギーや感染のリスクが極めて低い。 |
| 穿孔部(膜の穴)も修復可能 | 手術中に上顎洞の膜が破れても、PRGF膜で自然に修復できる。 |
PRGF併用による治療成績
治療成績の実際
アメリカ・ルイジアナ州立大学で行われた研究では、31名の患者に対して行われたサイナスリフトの追跡調査で、インプラントの生存率は95.8%という高い結果が得られました。平均約2年間の経過観察でも、インプラントの安定性(ISQ値)は上昇し、骨とインプラントがしっかり結合していることが確認されています。
また、別の長期研究でも
7年以上の追跡で インプラント生存率90%
2年間の追跡で 成功率98.6%
という非常に良好なデータが報告されています。
治療成功の要因
PRGFを用いた治療が高い成績を出せている理由は、いくつかあります。
| 要因 | 説明 |
|---|---|
| 丁寧な事前検査(CBCT撮影) |
手術前に3Dレントゲンで上顎洞の状態を正確に把握。 炎症や病変があれば、耳鼻科で治療を行ってから手術へ進みます。 |
| 良好な初期固定 |
すべてのインプラントが安定した状態で埋入され、 術後の骨結合がスムーズに進行します。 |
| PRGFによる再生効果 |
成長因子が骨細胞を活性化し、骨の形成と治癒を促進。 炎症や痛みを抑える働きも期待できます。 |
| 低い合併症リスク |
PRGF膜により上顎洞の膜の損傷(穿孔)も修復可能。 術後のトラブルが少ないのが特徴です。 |
長期的な予後
PRGFを用いた治療の長期的な予後も良好です。別の研究では、100箇所の上顎洞底挙上術を受けた患者の平均7.2年の追跡調査で、90%のインプラント生存率が報告されています。また、2年間の追跡調査では98.6%のインプラント成功率という報告もあります。
これらのデータは、PRGFを併用した上顎洞底挙上術が、骨が少ない患者さんに対して長期的に安定した治療結果をもたらすことを示しています。適切な術前評価と丁寧な手術手技、そしてPRGFによる再生促進効果が組み合わさることで、高い成功率が実現されているのです。
当院でも多くの方にPRGFをご提供させていただき大変多くの患者様が長期的且つ安定した治療結果を得られております。
他の骨造成法との比較
骨が不足している場合の治療法は、上顎洞底挙上術以外にもいくつか方法があります。
| 方法 | 適応 | 特徴 |
|---|---|---|
| サイナスリフト(上顎洞底挙上術) | 骨の厚みが5mm以下 |
上顎洞の膜を持ち上げて骨補填材を入れる方法。 PRGFを併用することで再生力が高まり、治癒の質と安定性が向上します。 |
| ソケットリフト | 骨の厚みが5mm以上 |
抜歯した穴から骨補填材を入れる方法。 切開が少なく、患者さんの負担が軽い低侵襲手術です。 |
| GBR法(骨再生誘導法) | 下顎・前歯など骨が不足している部位 |
骨補填材を詰め、特殊な膜で覆って骨の再生を促進。 数ヶ月かけて新しい骨が形成されます。 |
治療法の選択基準
どの治療法を選択するかは、骨の不足の程度や部位によって異なります。上顎の奥歯で骨の厚みが5mm以下の場合は、サイナスリフトが適していると考えます。5mm以上の骨がある場合は、ソケットリフトで対応できる可能性があります。
下顎や上顎の前歯部など、上顎洞が関係しない部位では、GBR法が選択されることが多いです。
一番重要なのは、患者さんの全身状態や希望する治療期間、費用なども考慮して、最適な治療法を選択することが重要です。当院では、詳細な検査と丁寧なカウンセリングを通じて、一人ひとりに最適な治療計画を立案しています。
まとめ:骨が少なくても諦めないでください
骨が少ないという理由でインプラント治療を諦める必要はありません。
サイナスリフトとPRGFを併用した再生医療により、従来では難しかった症例でも高い成功率で治療が可能になっています。95.8%というインプラント生存率は、この治療法の有効性を示す確かな証拠です。
当院では、長年にわたるインプラント治療の経験と、PRGF-Endoret®指導医・公認インストラクターとしての専門知識を活かし、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。詳細な術前検査、丁寧な手術手技、そして適切な術後管理により、安全で確実な治療を実現しています。
骨が少ないと診断された方、他院で治療を断られた方も、ぜひ一度東京BTクリニック歯科・医科にご相談ください。
参照:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7338070/

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医

