2026年1月21日

インプラント骨造成とは?治療の必要性と基本知識
骨造成とは、インプラントを安定して埋め込むために必要な顎の骨の量や高さを増やす治療法です。歯周病や長期間の歯の欠損により骨が吸収されてしまった場合、インプラント体を支えるための十分な骨がないことがあります。このような状況では、骨造成を行うことでインプラント治療が可能になります。
近年では、骨造成を行わずに太く短いインプラントや細いインプラントで対応するケースも増えてきました。これにより、腫れや痛み、出血、感染リスクが軽減され、傷の治癒も早くなります。しかし、インプラントの固定だけでなく、歯肉や骨のボリュームを重視する場合には、骨造成が必要となることが多いのです。
骨造成手術後の痛みの経過と正常な回復プロセス
手術当日から3日目までの急性期
骨造成手術後の痛みには一定のパターンがあります。手術当日は麻酔の効果により痛みを感じにくいですが、麻酔が切れる2〜3時間後から痛みが始まります。
手術後1〜3日目は、痛みと腫れが最も強くなる時期です。この期間が最も辛い時期となりますが、処方された鎮痛薬で十分にコントロール可能なレベルです。痛みの程度には個人差がありますが、日常生活に大きな支障をきたすことは多くありません。
術後4日目から1週間の回復期前半
4日目を過ぎると、痛みは徐々に落ち着いてきます。腫れも4〜5日目頃から少しずつ引いていき、食事や会話も楽になってきます。この時期に痛みが急激に悪化する場合は要注意です。感染症などの可能性があるため、すぐに担当医に連絡しましょう。
術後1週間以降の回復期後半
術後1週間を過ぎると痛みはかなり軽くなり、日常生活もほぼ普通に送れるようになってきます。抜糸は通常7〜10日後に行われ、抜糸後は口の中の違和感や軽い痛みもさらに改善していきます。完全に痛みが消失するまでには2〜3週間程度かかることもありますが、これは正常な回復過程です。
骨造成の種類と各治療法の特徴
GBR法(骨再生誘導法)
GBR法は、あごの骨を再生するための代表的な方法です。
虫歯や歯周病、外傷などで骨が痩せた部分に、骨補填材(または自分の骨)を入れ、その上から特殊な膜(メンブレン)で覆うことで、骨が自然に再生しやすい環境を作ります。
この膜は「骨を作る細胞」と「歯ぐきの細胞」を分ける役割があり、
骨がきれいに再生されるようにサポートします。
骨の量が少ない場合でも、インプラントと同時に治療を行えるケースも多く、
治療期間を短縮できるメリットがあります。
サイナスリフトとソケットリフト(上顎の骨を増やす治療)
上の奥歯の骨は特に薄く、インプラントを埋める高さが足りないことがあります。
その場合に行うのが「上顎洞底挙上術(サイナスリフト・ソケットリフト)」です。
サイナスリフト
歯ぐきを横から切開し、上あごの空洞(上顎洞)の底を持ち上げて、そのすき間に骨補填材を入れる方法です。
骨の高さが5mm以下の方でも対応でき、広い範囲の骨造成が可能です。
ソケットリフト
インプラントを埋める穴から骨補填材を入れる、より負担の少ない方法です。
骨の高さが5mm以上残っている場合に適応され、サイナスリフトよりも回復が早く、低侵襲(体への負担が少ない)という特徴があります。
最近では、骨補填材を使わずに「ワイドショートインプラント」を使用して
3mm程度の骨でも対応できるケースが増えています。
遊離骨移植(自家骨移植)
遊離骨移植は、自分の骨を使って骨を再生させる治療法です。
下あごや腰の骨(骨盤)などからブロック状に骨を採取し、骨が足りない部分に移植してネジで固定します。
人工骨よりも「生着率(定着のしやすさ)」が高く、大きく骨を増やしたい場合に用いられます。
ソケットプリザベーション(抜歯後の骨を守る治療)
ソケットプリザベーションは、抜歯をしたあとに行う骨保存治療です。
抜いたあとの穴(抜歯窩)に人工骨や骨補填材を入れ、その上を膜で覆って骨が痩せないように保ちます。
抜歯後に放置すると骨は時間とともに吸収されてしまいますが、この治療を行うことで、将来的にインプラントを入れやすくすることができます。
PRGF療法による痛みの軽減効果とメカニズム
PRGF療法とは何か
PRGF(Plasma Rich in Growth Factor)療法は、患者さん自身の血液から抽出した血小板とその中に含まれる成長因子および血漿成分を用いて骨形成を促進する技術です。
この画期的な再生医療技術は、現在では歯科領域だけでなく、整形外科や美容外科など幅広い分野で活用されています。わずか20ccほどの採血で、骨や軟組織を効率よく再生するタンパク質(成長因子)を取り出し、治療部位に応用します。
PRGF療法が痛みを軽減するメカニズム
PRGF療法の最大の特徴は、患者さん自身の血液を使用するという点です。血液の中でも特に血小板には、様々な成長因子が豊富に含まれています。
PRGFに含まれる主な成長因子には、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)などがあります。これらの成長因子が適切なバランスで作用することで、組織の再生が効率的に進み、術後の炎症や腫れが抑えられ、痛みも軽減されます。
術後の痛みを軽減する実践的な対処法
冷やすことと薬の適切な使用
術後48時間以内は患部を外側から冷やすことで、痛みと腫れを効果的に抑制できます。アイスパックをタオルで包み、15分間冷やして15分間休憩するサイクルを繰り返すことで、腫れと痛みを抑えられます。
処方された鎮痛薬は痛みが強くなる前に定期的に服用し、抗生物質は痛みが治っても最後まできちんと飲み切りましょう。痛み止めを服用して軽減される場合は、正常な痛みといえます。
食事と生活習慣の工夫
術後の食事は患部に負担をかけないよう、やわらかく温度の低いものを選択します。おかゆ、スープ、ヨーグルト、ゼリーなどが適しており、刺激の強いスパイスや酸味の強い食品は避けましょう。
飲酒と喫煙は血行を悪化させ治りを遅らせるため、回復期間中は控える必要があります。また、術後数日間は激しい運動や長時間の入浴を避け、頭部を少し高くして休むことで腫れと痛みを軽減できます。
適切な口腔ケアと安静
術後の口腔ケアは傷口を傷つけないよう注意深く行います。手術部位は直接触れないようにし、うがいは処方された洗浄液を使用するか、優しく行います。
適切な安静を保つことで、組織の修復が効率的に進みます。無理をせず、体が回復に専念できる環境を整えることが大切です。
注意すべき異常な痛みと受診のタイミング
感染症が疑われる痛み
術後3〜4日経過しても痛みが軽減せず、むしろ悪化している場合は感染の可能性があります。
発熱、膿の排出、患部の異常な腫れや発赤、口臭の悪化などの症状が伴う場合は、速やかに医師の診察を受ける必要があります。感染症は早めの対応が重要です。放置すると骨造成材を取り除く必要が出てくる場合もあります。
痛み止めが効かない場合
インプラント手術後は痛み止めが処方されます。基本的には、痛み止めを服用すれば日常生活には支障をきたさない程度に痛みが軽減されるでしょう。
しかし、痛み止めを服用しても痛みが軽減されないケースが存在します。手術後の回復過程に、何らかの問題が生じている可能性があるので注意が必要です。口腔内の組織が過剰に反応している可能性や、ほかの健康問題が原因で痛みが増強されている可能性もあるので、速やかに歯科医師に相談しましょう。
1週間以上続く痛みと時間経過とともに悪化する痛み
インプラント手術後の痛みは、2〜3日をピークに1週間程度で徐々に軽減します。手術から1週間以上経過しても痛みが続く場合は注意しましょう。
時間の経過とともに痛みが悪化する場合、通常の回復過程で生じる痛みではない可能性が高いでしょう。痛みが徐々に増す場合、手術部位の感染や炎症が原因であることが多いです。インプラント周囲の骨や組織が拒絶反応を起こしている場合や、手術部位が適切に治癒していない場合もあるため、早急な受診が必要です。
まとめ:骨造成の痛みと向き合い、安心して治療を受けるために
インプラント骨造成手術後の痛みは、適切な知識と対処法により大幅に軽減することができます。
術後2〜3日をピークに、1週間程度で徐々に痛みが軽減するのが正常な経過です。処方された鎮痛薬でコントロール可能な痛みであれば、過度に心配する必要はありません。冷却、適切な食事、安静などの対処法を実践することで、快適な回復期間を過ごすことができます。
PRGF療法は、患者さんご自身の血液から抽出した血小板とその中に含まれる成長因子および血漿成分を活用することで、組織の再生を促進し、術後の痛みや腫れを軽減する画期的な治療法です。自己由来のため安全性が高く、骨密度の向上や骨組織の相対的割合の増加など、高い効果が確認されています。一方で、痛み止めが効かない、1週間以上痛みが続く、時間とともに悪化するといった異常な痛みのサインには注意が必要です。骨が少ないと診断された方、他院で治療を断られた方も、ぜひ一度東京BTクリニック歯科・医科にご相談ください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医
参考:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11808431/

