2026年1月15日

変形性膝関節症の原因を理解することの重要性
変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることから始まり、やがて骨の変形や強い痛みを引き起こします。しかし、その原因は「加齢」だけではないのです。肥満、筋力低下、日常生活の習慣、遺伝的要因など、複数の要因が複雑に絡み合って発症します。
原因を正しく理解することで、予防策を講じたり、進行を遅らせたりすることが可能になります。本記事では、整形外科専門医の監修の下、変形性膝関節症の6つの主要な原因について詳しく解説します。
変形性膝関節症とは何か
変形性膝関節症は、膝関節にある軟骨が加齢や過度の負荷によってすり減り、痛みや動きの制限を引き起こす疾患です。
主に中高年に見られ、関節内の炎症や関節組織の変性が関与し、末期には骨の変形も引き起こします。
症状の段階的進行
初期段階
起き上がるときや動き出すときに膝がこわばる感覚があります。重く感じたり、鈍い痛みを感じたりすることが特徴です。
中期
膝の痛みが持続するようになり、正座や階段の上り下りが困難になります。膝が腫れて熱を持ち、歩くときにきしむような音がすることもあります。
末期
これまでの症状がさらに悪化し、歩く、座る、しゃがむといった日常的な動作が困難になります。痛みに苛まれる時間が長くなり、精神的負担も大きくなるのです。
痛みと変形のメカニズム
痛みの原因
膝の関節内にある「滑膜」の炎症です。軟骨がすり減って削り取られた軟骨のかけらが、関節液の中を漂い、関節の内側を覆う滑膜を刺激することで炎症が生じます。
膝の変形
軟骨がすり減った結果、骨どうしがぶつかり合うことで生じます。軟骨が消失すると、大腿骨とすねの骨が直にぶつかり、互いの骨をすり減らしてしまうのです。
骨には再生能力がありますが、膝には常に体重がかかっているため、正しい位置に骨を再生させることができず、横にはみ出した状態で増殖してしまいます。このはみ出して増殖した骨を「骨棘(こつきょく)」と呼びます。
変形性膝関節症の原因①:加齢による関節軟骨の退行性変化
変形性膝関節症の最も一般的な原因は加齢です。
年齢別に見ると、40歳代でも関節軟骨の劣化により発症が見られますが、特に70歳以上になると発症の割合が高くなります。これは加齢による関節軟骨の退行性変化が原因と考えられています。
軟骨の表面は本来非常に滑らかで、こすっても簡単にはすり減りません。しかし、膝は1日に何千回もこすれます。これが数十年続くと、タイヤがすり減るように徐々に磨耗が進んでいくのです。
その結果、すべすべしていた軟骨の表面はザラザラと毛羽立ちはじめ、軟骨自体が削り取られていきます。
50代以降で急増する理由
50代以降から変形性膝関節症が急増する背景には、関節軟骨の再生能力の低下があります。若い頃は軽微な損傷であれば自己修復できていたものが、加齢とともにその能力が衰えていくのです。
また、関節液の質や量も加齢とともに変化し、関節の潤滑機能が低下することも一因となっています。
変形性膝関節症の原因②:性差と女性ホルモンの影響
変形性膝関節症は、比較的男性より女性に多い疾患と言われています。
女性に多い理由ははっきりわかっていませんが、男性に比べて関節が小さいこと、筋肉が少ないこと、ハイヒールをはくこと、閉経後に女性ホルモンが減少することなどが影響していると考えられています。
女性ホルモンと骨代謝の関係
骨は常に新しい細胞と古い細胞が入れ替わっていますが、このサイクルには女性ホルモンが大きく関与しています。
女性は閉経すると女性ホルモンが減少するため、男性と比べると骨が脆くなりやすいのです。骨密度の低下は、関節への負担を増大させ、変形性膝関節症のリスクを高めます。
また、女性特有の生活習慣や身体的特徴も影響します。ハイヒールの着用は膝関節への負担を増やし、筋肉量の少なさは関節の安定性を低下させます。
閉経後の予防策
閉経後の女性は、特に膝関節の健康に注意を払う必要があります。適度な運動による筋力維持、カルシウムやビタミンDの摂取による骨密度の維持が重要です。
定期的な骨密度検査を受け、必要に応じて医師の指導のもと、適切な治療を受けることも推奨されます。
変形性膝関節症の原因③:肥満による膝関節への過度な負荷
体重が1kg増加すると、歩行の場合では平地で3~4倍、階段昇降の場合では6~7倍の負荷が膝にかかります。
このことからも分かるように、体重の増加はダイレクトに膝への負担が増えます。日々の生活で歩いたり階段を利用することが多い方は、特に体重をコントロールすることが重要です。
肥満が関節に与える影響
肥満は単に機械的な負荷を増やすだけではありません。脂肪組織から分泌される炎症性物質が、関節の炎症を促進することも明らかになっています。
特に内臓脂肪が多い場合、全身性の慢性炎症状態となり、関節軟骨の劣化を加速させる可能性があります。
また、肥満により膝周辺の筋肉への負担も増大し、筋疲労が蓄積しやすくなります。筋肉が疲労すると関節を支える力が弱まり、さらに関節への負担が増えるという悪循環に陥ります。
適正体重の維持が予防の鍵
変形性膝関節症の予防には、適正体重の維持が不可欠です。BMI(体格指数)を基準に、自分の適正体重を把握し、少しでも減量することが膝の健康につながります。
急激な減量は身体に負担をかけるため、医師や栄養士の指導のもと、無理のない範囲で体重管理を行うことが大切です。
変形性膝関節症の原因④:筋力低下と関節の不安定性
膝の周りには様々な筋肉があり、これらの筋肉が関節の負担を吸収して軽減させます。
しかし運動不足などで筋力が低下すると、関節の負担が増えて、不安定感も増してきます。特に太ももの前側についている「大腿四頭筋」という筋肉が大きく関与しています。
大腿四頭筋の重要性
大腿四頭筋は膝関節を安定させる最も重要な筋肉です。この筋肉が弱まると、歩行時や階段昇降時に膝がぐらつき、関節への負担が増大します。
また、筋力低下により膝関節の位置が不安定になると、軟骨の特定部位に過度な圧力がかかり、局所的な摩耗が進行します。
筋力維持のための運動療法
変形性膝関節症の予防には、膝周辺の筋力を維持することが極めて重要です。特に大腿四頭筋を中心とした筋力トレーニングが効果的とされています。
ただし、膝に痛みがある場合は、無理な運動は避け、医師や理学療法士の指導のもと、適切な運動療法を行うことが必要です。水中ウォーキングなど、膝への負担が少ない運動から始めることも一つの方法です。
変形性膝関節症の原因⑤:日常生活の習慣と職業的要因
膝には立っているだけでも負荷がかかっていますが、仕事が立ち仕事であったり、重い物を運ぶような重労働では、デスクワークのような仕事と比べて膝への負担が大きいです。
またスポーツをよくしている方や歩行での移動が多い方なども、膝への負担が増えています。このような状態が日常的に続くと、関節軟骨は磨耗されやすくなり、変形性膝関節症へと移行していきやすくなります。
職業と発症リスクの関係
農業、漁業労働、介護職など、日頃から膝を酷使する仕事についていると、性別問わず30代や40代でも発症することがあります。
特に、しゃがむ姿勢を長時間とる作業や、重量物の持ち運びを繰り返す作業は、膝関節に大きな負担をかけます。
スポーツ歴と外傷の影響
膝を酷使するスポーツ(スキー、サッカーなど)の経験者は、変形性膝関節症になりやすい傾向があります。
特にジャンプ動作の多いバレーボールやバスケットボール、急な切り返し動作の多いサッカーやバドミントン、相手と接触することが多いコンタクトスポーツなどでは膝の外傷が多く、前十字靭帯や半月板の損傷を経験すると、将来的に変形性膝関節症のリスクが高くなります。
日常動作の見直しと予防
日常生活で無理な姿勢や動きを行い、膝関節への負担をかけている人が多く、症状の進行を助長していることが多いため、膝関節に負担のかからない生活動作を意識することが大切です。
例えば、重い物を持ち上げる際は膝を曲げて腰を落とす、長時間の立ち仕事では適度に休憩を取る、階段の昇降時は手すりを使うなど、小さな工夫の積み重ねが予防につながります。
変形性膝関節症の原因⑥:遺伝的要因と下肢の変形
変形性膝関節症には遺伝子が関係していることがあります。
人間の体にある「一塩基多型」という遺伝子が関わっているとしており、この型を持っていない人と比較すると、持っている人は1.3倍も発症リスクが高いと結論付けています。
下肢の変形とO脚・X脚
両膝を揃えてまっすぐ立った時に、膝が離れているO脚の方や、膝を揃えると足首が離れていくX脚の方は、体重の荷重が関節の内側や外側に偏っていますので、変形性膝関節症になりやすいです。
特に日本人では変形性膝関節症になっていなくてもO脚の方が多く、O脚の場合、内側の関節面の負担が大きくなっている状態といえます。
下肢の変形は先天的な要因もありますが、日常の姿勢や歩き方の癖によって後天的に形成されることもあります。
変形性膝関節症の予防と早期対応
変形性膝関節症は、一度すり減った軟骨は再生しないというのが医学的な共通認識です。だからこそ、軟骨を損傷しないよう、またダメージを大きくしないよう、予防することがとても重要なのです。
予防のための3つの柱
第一に、膝に負担をかけない動作を心がけることです。正しい歩き方を意識し、前を見て背筋を伸ばし、膝を伸ばして歩くことで、筋肉を適切に使い、膝への負担を軽減できます。
第二に、適正体重を目指し、少しでも減量することです。体重管理は膝への負担を直接的に減らす最も効果的な方法の一つです。
第三に、膝周辺の筋トレやストレッチを行うことです。特に大腿四頭筋を中心とした筋力維持は、関節の安定性を高め、負担を軽減します。
早期発見と適切な治療
膝に違和感や軽い痛みを感じたら、早めに整形外科を受診することが大切です。初期段階であれば、保存療法(運動療法、薬物療法、装具療法など)で症状の進行を遅らせることができます。
放っておくと知らないうちに病状が進行してしまうので、予防や早期発見が何より重要なのです。
まとめ:変形性膝関節症の原因を知り、適切な対策を
変形性膝関節症の原因は、加齢だけではありません。
性差と女性ホルモンの影響、肥満による過度な負荷、筋力低下、日常生活の習慣、遺伝的要因と下肢の変形など、複数の要因が複雑に絡み合って発症します。
これらの原因を正しく理解することで、自分自身のリスク要因を把握し、適切な予防策を講じることができます。体重管理、筋力維持、正しい姿勢と動作、早期発見と治療が、膝の健康を守る鍵となります。
当院のDr吉岡は、日本整形外科学会認定専門医であり、膝関節外科を専門とする膝のスペシャリストです。これまで、なでしこジャパン(女子サッカー日本代表)のチームドクターを務めるなど、スポーツ現場や臨床の第一線で豊富な経験を積んでまいりました。
膝関節の痛みや治療法について、さらに詳しい方や、気になる方は一度東京BTクリニック歯科・医科にお気軽にお問い合わせください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医

