2026年1月07日

赤ちゃん(新生児)のいびきとは
赤ちゃんが寝ているときに「グーグー」といびきをかいていると、心配になる保護者の方は少なくありません。
大人のいびきとは異なり、赤ちゃんのいびきには成長過程に特有の原因があります。多くは一時的なものですが、中には治療が必要なケースも存在します。
本記事では、睡眠医療に携わる歯科医師の立場から、赤ちゃんのいびきの原因・見極めのポイント・受診の目安について、科学的根拠に基づいて解説します。お子さまの健やかな成長を見守るために、正しい知識を持っていただければ幸いです。
赤ちゃんがいびきをかく主な原因
新生児から乳幼児期の赤ちゃんがいびきをかく理由は、大人とは大きく異なります。ここでは、赤ちゃんがいびきをかく主な原因をわかりやすく解説します。
1. 気道がまだ未発達だから
赤ちゃんの体は成長の途中にあります。鼻の穴(鼻腔)や喉の奥(咽頭)が大人よりも細いため、少し鼻が詰まっただけでも空気の通り道が狭くなりやすいのです。
このため、風邪をひいていなくても、軽い鼻づまりや鼻水だけで「グーグー」「スースー」といびきをかくことがあります。多くは一時的なもので、体が成長すると自然に治まります。
2. 風邪などの感染症による鼻づまり
赤ちゃんはまだ免疫が未熟なので、風邪やウイルス感染にかかりやすい時期です。
鼻の粘膜が腫れて鼻づまりが起こると、赤ちゃんは鼻で呼吸しづらくなり、自然と口呼吸になります。口呼吸になると舌が喉の奥に落ち込みやすく、空気の通り道が狭くなっていびきが出やすくなります。このタイプのいびきは、風邪が治れば自然に治まることがほとんどです。
3. アデノイド肥大や扁桃腺肥大などの構造的な問題
一方で、赤ちゃんや小さな子どもに多いのが、喉の奥にあるアデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)の肥大です。これらは免疫の働きを持つ組織で、2〜6歳ごろに最も大きくなります。
ところが、アデノイドや扁桃腺が大きくなりすぎると、気道を物理的にふさいでしまうことがあり、寝ているときにいつもいびきをかくようになります。
放っておくと、呼吸が止まりかける「睡眠時無呼吸」の原因になることもあるため、長く続くいびきは医療機関に相談しましょう。
4. アレルギーによる鼻づまり
最近では、赤ちゃんでもアレルギー性鼻炎を持つ子が増えています。ハウスダストやダニなどのアレルゲンが原因で、鼻の粘膜が慢性的に炎症を起こし、常に鼻づまり状態になることがあります。このような場合、赤ちゃんはいびきだけでなく、口呼吸や寝苦しさが目立つようになります。寝ているときに口を開けていたり、鼻水が長引いていたりする場合は、アレルギーの可能性も疑ってみましょう。
心配のない赤ちゃんのいびきと注意すべきいびきの違い
赤ちゃんが寝ているときにいびきをかくと、「大丈夫かな?」と不安になる親御さんは多いものです。けれども、赤ちゃんのいびき=必ずしも病気というわけではありません。赤ちゃんの体はまだ発達途中で、ちょっとしたきっかけでもいびきをかくことがあります。
ここでは、心配のいらない赤ちゃんのいびきと、注意が必要ないびきの見分け方をわかりやすく解説します。
心配のいらない赤ちゃんのいびき
赤ちゃんのいびきの多くは一時的なもので、ほとんどが成長とともに自然に改善します。
たとえば、
風邪のひき始めで数日間だけいびきをかく
仰向けで寝たときに軽く音がする
深い眠りのときだけ「スースー」と呼吸音が聞こえる
こうしたいびきは、生理的なもので問題ありません。
赤ちゃんの鼻や喉は大人より細く、気道も狭いため、わずかな振動でも音が出やすいのです。
また、睡眠中の姿勢や体調によっても音の大きさが変わることがあります。
注意が必要ないびき
次のような特徴が見られる場合は、一度、専門医に相談しましょう。
毎晩のように大きないびきをかく
いびきの途中で息が止まるように見える
睡眠中に何度も目を覚ます
寝汗をたくさんかく、苦しそうに寝ている
朝起きたときに機嫌が悪い、日中に眠そうにしている
成長曲線から外れている、体の発達が遅れている
いつも口を開けて寝ている
こうした場合、赤ちゃんの気道が何らかの理由で狭くなっている可能性があります。特に、アデノイドや扁桃腺が大きい子は、慢性的ないびきになりやすい傾向があります。
無呼吸を伴ういびきは要注意
「いびきが大きくて途中で呼吸が止まる」「寝ているのに息苦しそう」そんな様子がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
この病気は大人だけでなく、赤ちゃんや幼児にも起こることがあるのです。
睡眠中に10秒以上呼吸が止まったり、浅くなったりする状態が何度も繰り返されると、脳や体が酸素不足になり、成長ホルモンの分泌や脳の発達に影響を及ぼすおそれがあります。
赤ちゃんのいびきが引き起こす可能性のある影響
赤ちゃんのいびきは一見かわいらしく感じるかもしれませんが、慢性的ないびきを放置すると、成長や発達に影響を及ぼす可能性があります。
特に、眠っている間に呼吸が止まりかける「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を伴う場合は注意が必要です。
成長・発達への影響
赤ちゃんは眠っている間に、成長ホルモンが活発に分泌されます。
しかし、いびきや無呼吸によって深い眠り(ノンレム睡眠)が妨げられると、成長ホルモンの分泌が減少し、体の発達が遅れる原因になることがあります。また、睡眠中に呼吸が浅くなったり止まったりすることで、脳に送られる酸素の量が減少します。この状態が続くと、赤ちゃんの脳の発達や集中力、記憶力の形成に影響を与える可能性があると指摘されています。
顔や歯並びへの影響
赤ちゃんの時期に口呼吸が習慣化すると、顔の骨格の発育にも影響します。
通常、鼻呼吸をしていると舌が自然に上あご(上顎)に触れ、上顎骨の成長を助けます。しかし、口を開けて呼吸する状態が続くと、舌の位置が下がり、上顎が十分に発達しにくくなります。その結果、歯並びが乱れたり、顔が細長く見える「アデノイド顔貌(がんぼう)」と呼ばれる顔つきになることがあります。
これは見た目だけでなく、噛む力や発音、鼻呼吸のしやすさにも影響を与えることがあります。
免疫機能への影響
赤ちゃんにとって、鼻呼吸は健康を守るための重要な機能です。
鼻は、空気中のホコリやウイルスを取り除き、吸い込む空気を加湿・加温する役割を果たしています。ところが、いびきや鼻づまりによって口呼吸が続くと、このフィルター機能が働かず、喉や気管が直接刺激を受けやすくなります。
その結果、風邪や気管支炎などの感染症にかかりやすくなるほか、口内の乾燥によって炎症やむし歯のリスクも高まります。
受診の目安とタイミング
早めの受診を検討すべきケース
以下のいずれかに当てはまる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
① いびきが1か月以上続いている場合
風邪や鼻づまりなどの一時的な原因ではなく、構造的な問題(アデノイド肥大・扁桃腺肥大など)や、アレルギー性鼻炎などの慢性的な疾患が関係している可能性があります。赤ちゃんのいびきが長期間続くときは、成長や睡眠の質に影響を及ぼすこともあるため、放置は禁物です。
② 睡眠中に呼吸が止まっているように見える場合
「息が止まった」「苦しそうにしている」と感じるときは、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。特に、10秒以上呼吸が止まる、あるいは呼吸が浅くなって顔色が変わるような場合は、すぐに医療機関へ相談を。
赤ちゃんでも無呼吸が繰り返されると、脳や体の発達に影響することがあります。
③ 日中の様子に変化がある場合
夜のいびきだけでなく、日中の赤ちゃんの行動にも注目してください。
眠そうにしている、機嫌が悪い、動きが鈍い、表情が乏しなどのサインは、夜間の睡眠の質が低下しているサインかもしれません。
また、成長曲線から外れている、体重が増えにくいといった場合も、
成長ホルモン分泌や酸素供給が十分に行われていない可能性があり、早期の医学的評価が必要です。
当院の歯科領域における小児顎顔面骨格矯正
赤ちゃんや幼児期から続く口呼吸やいびきの多くは、顎顔面(がくがんめん)骨格の発育不全が関係していることがあります。
上顎が狭く気道が狭い
舌の位置が低く、鼻呼吸がしにくい
口呼吸の習慣が長く続いている
といったケースでは、歯科的なアプローチによって根本的な改善が期待できます。
赤ちゃん(新生児で)ではありませんが、当院では、小児期の骨の柔軟性を活かした顎顔面骨格矯正を行い、上顎や下顎の成長を適切に誘導することで、気道を広げ、鼻呼吸を促す治療を行っています。
これにより、いびきや無呼吸の軽減だけでなく、将来的な歯並びや顔立ちの発育にも良い影響が期待できます。一般的に、顎顔面の成長が活発な5歳から12歳頃が治療の適した時期とされます。特に上顎の成長は12歳頃までにほぼ完了するため、遅くともこの時期までに顎顔面骨格矯正を開始するのが理想的です。
また、受け口(反対咬合)の場合は、顎の発育バランスを整えるために、3歳頃などより早い段階から治療を始めることもあります。
家庭でできる対策と予防
睡眠環境を整える
まず大切なのは、赤ちゃんが快適に眠れる環境を整えることです。
室温は18〜22℃、湿度は50〜60%を目安に保ちましょう。乾燥した空気は鼻の粘膜を刺激して鼻づまりを悪化させ、いびきの原因になります。
特に冬場は暖房によって空気が乾燥しやすいため、加湿器を使うと効果的です。加湿器がない場合は、濡れタオルを干すだけでも湿度を保つことができます。
寝る姿勢の工夫
寝る姿勢もいびきに影響します。
仰向け寝では舌の付け根が喉に沈み込みやすく、赤ちゃんでも気道が狭くなることがあります。
ただし、1歳未満の赤ちゃんは仰向けで寝かせることが推奨されています(SIDS:乳児突然死症候群の予防のため)。
1歳を過ぎたら、横向きで寝かせるなどの工夫を医師と相談しながら行いましょう。
アレルギー対策
赤ちゃんのいびきには、アレルギー性鼻炎やハウスダストが関係していることもあります。寝具は週に1〜2回を目安に洗濯し、ダニやホコリを減らすことが重要です。ぬいぐるみやクッションはアレルゲンが溜まりやすいため、赤ちゃんの寝室にはなるべく置かないようにしましょう。
また、空気清浄機を使うことで、アレルギー症状や鼻づまりを軽減できます。
鼻のケア
赤ちゃんは自分で鼻をかむことができないため、鼻づまりのケアも保護者のサポートが欠かせません。鼻水が多いときは、鼻吸い器を使って優しく吸い取ってあげましょう。また、生理食塩水を使った鼻洗浄も鼻の通りを良くする方法です。
ただし、やりすぎると粘膜を傷つけるおそれがあるため、1日1〜2回程度の使用に留めましょう。
受動喫煙を避ける
タバコの煙は赤ちゃんの気道粘膜を刺激し、炎症や鼻づまりの原因になります。
家庭内での喫煙はもちろん、衣服や髪についた三次喫煙(残留煙)も影響するため、喫煙者は赤ちゃんの近くに行く前に服を替えたり手洗いを徹底することが大切です。
まとめ
赤ちゃんのいびきは、多くの場合一時的なもので心配する必要はありません。
しかし、慢性的ないびきや無呼吸を伴ういびきは、成長・発達に影響を及ぼす可能性があるため、早期の医学的評価が重要です。1か月以上続くいびき、睡眠中の無呼吸、日中の活動性低下、成長不良などの症状が見られる場合は、小児科や耳鼻咽喉科を受診してください。小児期になってもいびきが続く、睡眠時無呼吸症候群の可能性がある場合は歯科領域の顎顔面骨格矯正が理想です。
家庭でできる対策としては、適切な睡眠環境の整備、アレルギー対策、鼻のケア、受動喫煙の回避などがあります。これらを日常的に実践することで、いびきの予防や軽減につながります。
お子さまの健やかな成長のために、睡眠の質は非常に重要です。気になる症状があれば、早めに専門家に相談し、適切な対応を取ることをお勧めします。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医

