2025年12月31日

睡眠中の歯ぎしりといびき、実は深い関係があります
実は、歯ぎしりといびきは、ただの睡眠中の癖ではありません。これらは「睡眠時無呼吸症候群(OSA)」と深く関係しており、放っておくと全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
知っておきたい統計データ
・成人の8〜12%**が睡眠関連歯ぎしり(SRB)を経験
・閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者の30〜50%**に歯ぎしりが併発
・高齢者の約50%**に睡眠時無呼吸症候群の症状が見られる
特に注目すべきは、睡眠時無呼吸症候群は適切に管理されないと、慢性的な酸素不足により心臓や血管の病気、さらには死亡リスクが高まる可能性がある深刻な疾患だということです。
本記事では、歯ぎしりといびきの関係性、そのメカニズム、効果的な治療法について詳しく解説します。
歯ぎしりと睡眠時無呼吸症候群の関係性
睡眠関連歯ぎしり(SRB)とは何か
睡眠関連歯ぎしり(SRB)は、睡眠中に歯を擦り合わせたり、強く噛みしめたりする口腔運動行動です。そのバイオマーカーである「リズミカルな咀嚼筋活動(RMMA)」は、年齢を問わず高頻度で観察されます。
歯ぎしりには主に3つのタイプがあります。
グラインディング(歯ぎしり)
ギリギリと歯を横方向にこすり合わせるタイプで、最も多く見られます。
クレンチング(食いしばり)
上下の歯を強く押し付けるタイプです。
タッピング
歯をカチカチと鳴らすタイプになります。
興味深いことに、歯軋りの多くは睡眠が浅くなる瞬間におこることが多く、遺伝的要因(MYO3B遺伝子)も分かっています。つまり、単なる癖ではなく、体質的な要素も関与しているのです。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の特徴
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸の一時的停止(無呼吸)と酸素の一過性低下(低酸素)を伴う疾患です。全年齢で観察されますが、特に高齢者の約50%に見られ、男性に多い傾向があります。
なぜ歯ぎしりと閉塞性睡眠時無呼吸が併発するのか
医学的には完全には解明されていませんが、成人の30〜50%で両方の症状が同時に起こっていることが報告されています。
ですが、睡眠中に気道が狭くなると、顎の筋肉が動いて舌を前に出し、気道を確保しようとするのです。
実際の研究では、「無呼吸の後に歯ぎしりが起こる」パターンが、「歯ぎしりの後に無呼吸が起こる」パターンの3.7〜10倍多いことが分かっています。これは、歯ぎしりが無呼吸への体の反応である可能性を強く示唆しています。
診断方法と検査の重要性
歯軋りの診断は3段階で評価されます。
可能性あり
本人や家族の報告のみ
疑い
歯科検査で歯の削れや欠けが確認される
顎関節の状態を評価
噛む筋肉の緊張度をチェック
朝起きた時の顎の疲労感
確定
筋電図(EMG)記録によってリズミカルな咀嚼筋活動が確認された場合
診察では、歯の摩耗パターン、顎関節の状態、咬筋の緊張度などを詳しく観察します。朝起きたときの顎の疲労感や、歯が浮くような感覚も重要な診断の手がかりとなります。
睡眠時無呼吸の診断プロセス
ステップ1
眠気・疲労・いびき・呼吸停止の自覚といった症状に加え、肥満度(BMI)、顎の位置(後顎症の有無)、扁桃の大きさ、舌の大きさなどの解剖学的要因を評価します。
ステップ2
在宅睡眠検査(HST)または睡眠ポリグラフ検査(PSG)が必要です。これらの検査では、気流、呼吸努力、酸素レベル、心拍数などの心肺変数を測定します。
重症度の判定
無呼吸低呼吸指数(AHI)によって評価されます。AHIが5〜15回/時間で軽度、15〜30回/時間で中等度、30回/時間以上で重度と分類されます。
併発診断のための在宅睡眠検査
歯軋りと睡眠時無呼吸の併発診断を確定するには、在宅睡眠検査(HST)が適応となる場合があります。この検査では、顎筋(咬筋または側頭筋)の筋電図(EMG)と、気流、呼吸努力、酸素レベル、心拍数などの心肺変数を同時に測定します。
在宅検査の利点は、患者さんが普段の睡眠環境で検査を受けられることです。病院での一泊検査と比べて、より自然な睡眠状態を評価できる可能性があります。
歯軋りと睡眠時無呼吸の併発治療
持続陽圧呼吸療法(CPAP)の役割
CPAPは、睡眠時無呼吸治療の第一選択として広く使用されている治療法です。睡眠中にマスクを装着し、持続的に陽圧の空気を送り込むことで、気道の閉塞を防ぎます。歯軋りを伴う睡眠時無呼吸の患者の場合、CPAP単独での治療も効果的です。ただし、CPAP治療の継続には課題もあります。マスクの違和感や、機器の音、口や鼻の乾燥、持ち運びの不便さから使用を中断してしまう患者さんも少なくありません。
併用療法の可能性
最近では、CPAPとマウスピースの併用療法が注目されています。CPAPの圧力を下げつつ、マウスピースで気道を物理的に広げることで、治療の快適性と効果の両立を図ることができます。ただし、すべての治療法には限界とリスクがあるため、個人差が大きいことを考慮し、専門の医療機関への相談が必須です。
当院のマウスピース療法
当院のマウスピースには、大きく分けて2つのタイプがあります。

可動式マウスピース
上下の装置が連結されながらも、睡眠中にある程度口を動かせるタイプです。
自然な顎の動きを保てるため違和感が少なく、初めての方でも比較的慣れやすいのが特徴です。
固定式マウスピース
上下のマウスピースをしっかり固定して、下顎の位置を安定的に保持します。
気道の確保力が高く、いびきや無呼吸が重めの方にも対応できます。
どちらを採用するかは、症状の重さや顎関節の可動性、歯列の状態を総合的に評価した上で決定します。
CT・セファロ検査による精密診断
従来のマウスピース作製では、単純な型取りのみで行われることも多くありました。当院では、より効果的で顎関節に負担の少ないマウスピースを作る為、CTやセファロを用いた精密検査が可能です。これらの検査により、単に「前に出す」だけでなく、「どの角度で、どれくらい前に出すか」を科学的に決定できます。その結果、効果が高く、長期使用でも顎関節に負担をかけにくいマウスピースが作製できるのです。
まとめ:早期発見と適切な治療が鍵
歯ぎしりといびきは、単なる睡眠中の癖ではなく、睡眠時無呼吸症候群という生命を脅かす可能性のある疾患のサインかもしれません。成人の30〜50%で両者の併発が報告されており、決して珍しいことではありません。
重要なのは、早期発見と適切な診断です。朝起きたときの顎の疲れ、日中の眠気、家族からのいびきの指摘などがあれば、まず専門医に相談することをお勧めします。治療法は、CPAPやマウスピースなど複数の選択肢があります。それぞれに利点と注意点があり、個々の患者さんの状態に応じた個別化治療が必要です。治療についてのご相談は、東京BTクリニック歯科・医科までお気軽にお問い合わせください。皆様の健やかな睡眠と健康をサポートいたします。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医

