2025年12月30日

マウスピースで歯ぎしりと無呼吸を同時に改善!知っておきたい治療のすべて
夜間の歯ぎしりや睡眠時無呼吸症候群でお悩みの方は、決して少なくありません。朝起きたときに顎が痛い、家族からいびきがうるさいと指摘される、日中の強い眠気に悩まされているなど、こうした症状は、実は同じ原因から生じている可能性があります。
睡眠関連歯ぎしり(SRB)と閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、成人の約30~50%で併発することが報告されています。これらの症状を放置すると、歯の損傷だけでなく、心血管疾患や高血圧などのリスクが高まることが明らかになっています。
本記事では、睡眠歯科と睡眠時無呼吸治療の専門医として、マウスピース治療による歯ぎしりと無呼吸の同時改善について、知見を交えながら詳しく解説します。
睡眠関連歯ぎしりと睡眠時無呼吸症候群の関係
睡眠関連歯ぎしり(SRB)は、成人の8~12%に報告される口腔運動行動です。一方、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は高齢者の約50%に見られます。驚くべきことに、成人の約30~50%でこれらの症状が併発していることが報告されています。
併発のメカニズム
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの55%で、「無呼吸の後に歯ぎしりが起こる」というパターンが観察されています。
これは、歯ぎしりが気道を開くための体の防御反応として働いている可能性があると考えられています。つまり、呼吸が止まりそうになった時、体が無意識に歯ぎしりをすることで気道を確保しようとしているのです。
診断における注意点
睡眠関連歯ぎしりの診断は、歯ぎしり音の自己報告、食いしばりの自覚、顎の痛みや頭痛、歯の損傷の臨床観察に基づきます。閉塞性睡眠時無呼吸の臨床診断は、眠気と疲労、いびき、睡眠の質、呼吸停止の自覚に加え、肥満、後顎症、大きな扁桃、巨舌などの解剖学的要因を考慮します。
併発診断を確定するには、在宅睡眠検査(HST)が適応となる場合があります。睡眠検査では、顎筋の筋電図(EMG)と、気流、呼吸努力、酸素レベル、心拍数などの心肺変数を測定します。
マウスピース治療の種類と特徴
オクルーザルスプリント(歯ぎしり防止用)
オクルーザルスプリントは、上下の歯が直接触れ合うことを防ぎ、歯や顎関節への負担を軽減する装置です。ただし、歯ぎしりだけでなく無呼吸症候群もある場合、このタイプは単独では使わない方が良いです。なぜなら15〜23%の人で呼吸状態が悪化する可能性が報告されているからです。口の中の空間が狭くなり、呼吸がしづらくなることがあるのです。
マウスピース(スリープスプリント/下顎前方移動装置)
下顎を少し前に出した状態で固定するマウスピースです。海外ではMADやOSと呼ばれることがありますが、基本的には同じ、下顎前方移動装置を指します。これにより、舌の付け根や軟口蓋(喉の奥の柔らかい部分)が沈み込まず、気道が広がって呼吸がしやすくなります。効果として歯軋りが65%減少し、睡眠の質が60%改善したという結果が得られています。そのため、歯軋りと無呼吸の双方に効果的とされております。
CPAP(持続陽圧呼吸療法)との併用
重度の睡眠時無呼吸を伴う場合、CPAPが第一選択となります。CPAPは鼻に装着したマスクから空気を送り込むことで、常に気道に圧力をかけ、気道の閉塞を防ぐ治療法です。CPAPが困難な方や、軽度から中等度の睡眠時無呼吸の方には、マウスピースが有効、またはCPAPとの併用仕様が推奨されます。
マウスピース治療の効果と科学的根拠
マウスピース治療の効果については、多くの臨床研究によって裏付けられています。ここでは、最新の科学的知見に基づいて、その効果を詳しく解説します。
歯ぎしりへの効果
マウスピースを使った研究では、装着開始から30日間でブラキシズム(歯ぎしり)エピソードが65%減少したという結果が出ています。
効果は装着直後から現れ、下顎が前に出ることで舌の位置が変わり、噛む筋肉の緊張がほぐれるためと考えられています。
無呼吸症候群への効果
マウスピースは軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群に対して、CPAPと同等の効果があることが複数の研究で示されています。
日本の研究では、スリープスプリントを使用することで死亡率が低下するという報告もあります。これは心臓や血管の病気のリスクが減ることを示しています。
両方の症状がある場合
歯ぎしりと無呼吸症候群の両方がある場合、マウスピースを使うことで同時に両方の症状を改善できる可能性があります。
マウスピースまたはCPAPを使用することで、歯ぎしりの強さが大幅に減少したことが報告されています。
マウスピース治療はどんな人に向いている?
マウスピース治療が向いている人
・軽度〜中等度の睡眠時無呼吸症候群がある方
・CPAPが続けられない、使いづらいと感じている方
・いびきがひどい方
・習慣的に歯ぎしりをしている方
・旅行や出張が多く、CPAPの持ち運びが大変な方
特に、顎が小さい・後ろに引っ込んでいる、口蓋(上顎)が狭いといった特徴がある方には効果的です。
注意が必要な人・向いていない人
・重度の睡眠時無呼吸症候群(無呼吸低呼吸指数が30以上)の方
・顎関節症がひどい方
・歯が少ない方
・重度の歯周病がある方
・中枢型睡眠時無呼吸の方
・心不全などの重い心臓病がある方
これらの場合は、医師や歯科医師と相談しながら、総合的な治療計画を立てることが大切です。
治療の進め方と期待できる効果
ステップ1:詳しい検査(初診)
まず、以下のような検査を行います。
問診
夜の症状(いびき、呼吸が止まる、歯ぎしり音)
昼の症状(眠気、疲れ、頭痛)
これまでの病気や治療
お口の検査
歯の状態(削れや欠けがないか)
顎の関節の動き
噛み合わせ
喉の形
睡眠検査
無呼吸症候群が疑われる場合は、自宅でできる簡易検査や、詳しい睡眠検査(ポリソムノグラフィー)を行います。呼吸の状態、酸素の量、睡眠の深さなどを調べます。
ステップ2:マウスピースの作製(2〜3週間)
検査結果をもとに、あなたに合ったマウスピースを選択します。マウスピースを選ぶ場合は、精密な型取りをして、オーダーメイドで作製します。
ステップ3:装着と調整
完成したマウスピースを装着し、使い方の説明を受けます。マウスピースの場合、下顎をどれくらい前に出すかを少しずつ調整していきます。
フォローアップのタイミング
1週間後:使い心地と初期反応の確認
1ヶ月後:症状改善度とマウスピースのフィット感をチェック
3ヶ月後:顎関節や歯の動きの安定性を確認
| 項目 | 改善が期待できる時期 | 内容 |
|---|---|---|
| いびき・睡眠の質 | 数日〜1週間 | 睡眠の深さや目覚めの爽快感が改善するケースが多い |
| 歯ぎしり | 約30日で65%減少(報告あり) | 顎の緊張が和らぎ、歯への負担も軽減 |
| 無呼吸症候群 | 数週間〜3か月 | 呼吸状態・酸素量・昼間の眠気が改善。軽〜中等度ではCPAP同等の効果も期待 |
| 長期的な健康効果 | 継続使用で半年〜1年 | 高血圧や心血管疾患リスク低下、認知機能維持など全身的な効果が報告 |
使用上の注意点とお手入れ
最初の頃に起こりやすい症状
・顎の違和感
・よだれが増える
・軽い歯の痛み
多くの場合、数週間で慣れてきますが、症状が続く場合は調整が必要です。遠慮せずに相談しましょう。
お手入れ方法
毎日の洗浄:使用後は流水で洗い、専用の洗浄剤を使う
定期的なクリーニング:歯科医院で専門的なクリーニングを受ける
清潔に保つことで、効果が長持ちし、口の中を健やかに保てます
精密検査で作る、あなた専用のマウスピース

マウスピース治療の効果を最大限に引き出すには、精密な検査と個々の患者さんに合わせた設計が重要です。当院の特徴を紹介します。
当院のマウスピースには、大きく分けて2つのタイプがあります。
可動式マウスピース
上下のマウスピースが連結されているものの、ある程度口を動かすことができるタイプです。睡眠中も多少の顎の動きが可能なため、違和感が少なく慣れやすいのが特徴です。
固定式マウスピース
上下のマウスピースをしっかり固定し、下顎の位置を確実に保持するタイプです。気道確保の効果が高く、より重度の症状に対応できます。
どちらが適しているかは、症状の程度、顎関節の状態、歯の状態などを総合的に判断して決定します。
CT・セファロ検査による精密診断
従来のマウスピース作製では、単純な型取りのみで行われることも多くありました。当院では、より効果的で顎関節に負担の少ないマウスピースを作る為、CTやセファロを用いた精密検査が可能です。これらの検査により、単に「前に出す」だけでなく、「どの角度で、どれくらい前に出すか」を科学的に決定できます。その結果、効果が高く、長期使用でも顎関節に負担をかけにくいマウスピースが作製できるのです。
その他治療法:レーザー治療(ナイトレーズ)との併用
マウスピース治療と併用できる新しい治療法として、レーザー治療(ナイトレーズ)があります。
特定の部位にレーザーを照射し軟組織を収縮させることで、気道を広げ、いびきを改善させる効果が期待できます。喉の粘膜を引き締めることで、いびきや軽度の無呼吸症候群の改善が見込めます。
ナイトレーズのメリット
痛みが少なく、麻酔不要で施術時間は15〜30分程度です。ダウンタイムがほとんどなくマウスピースとの併用で相乗効果を得ることができます。
マウスピース治療は長期間にわたって使用するものです。歯科医師の継続的な管理のもとで行うことで、歯と顎の健康を守りながら、無呼吸症候群の改善を目指せるのです。
さらに、お口周りの筋肉トレーニングの指導も受けられます。加齢とともに衰える舌の筋肉を鍛えることで、マウスピースの効果をさらに高めることができます。
まとめ:健康な睡眠のために
睡眠関連歯ぎしりと睡眠時無呼吸症候群の併発は、決して珍しいことではありません。これらの症状を放置すると、歯の損傷だけでなく、心血管疾患や高血圧などの全身的な健康リスクが高まります。
マウスピース治療は、両方の症状を同時に改善できる可能性があります。軽度から中等度の睡眠時無呼吸を有する方、CPAPの継続が困難な方にとって、マウスピース治療は有効な選択肢となります。一方、重度の睡眠時無呼吸を伴う場合は、CPAPとマウスピース治療の併用治療が推奨されます。
睡眠関連歯ぎしりと睡眠時無呼吸症候群の併発管理について、さらに詳しい情報をお知りになりたい方は、一度、東京BTクリニック歯科・医科にお気軽にご相談にいらしてください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医

