2025年10月19日

毎晩のいびきで家族に迷惑をかけていませんか?実は、いびきは単なる音の問題ではなく、あなたの健康に大きく影響している可能性があります。
いびきに悩む方は意外と多く、パートナーからの指摘で初めて自覚するケースがほとんどです。私が歯科医師として診てきた患者さんの中にも、いびきが原因で睡眠の質が低下し、日中のパフォーマンスに影響が出ている方が数多くいらっしゃいました。
いびきの原因とメカニズム
いびきは、睡眠中に気道が部分的に塞がれることで発生する振動音です。起きているときには問題なく呼吸できるのに、なぜ寝ているといびきをかくのでしょうか?
その答えは、睡眠中の筋肉の弛緩にあります。寝ている間は全身の筋肉が緩み、特に舌や喉の筋肉も例外ではありません。この状態で重力の影響を受けると、舌が喉の奥に沈み込み、気道を狭くしてしまうのです。この狭くなった気道を空気が通過する際に周囲の組織が振動し、いびき音が発生します。
いびきの主な原因としては、以下のようなものが挙げられます:
解剖学的要因:小さな顎、大きな舌、長い口蓋垂(のどちんこ)など
肥満:首周りの脂肪が気道を圧迫
加齢:年齢とともに喉の筋肉が弱くなる
アルコール摂取:筋肉をさらに弛緩させる
鼻づまり:風邪、アレルギー、鼻中隔湾曲など
睡眠姿勢:仰向けで寝ると舌が喉の奥に落ち込みやすい
口呼吸:鼻呼吸ができず口で呼吸する習慣
特に日本人は顎が小さい人が多く、解剖学的にいびきをかきやすい傾向があります。これに肥満や飲酒、睡眠薬の使用が加わると、いびきがさらに悪化することがあるのです。
いびきがもたらす健康リスク
実は、いびきは様々な健康リスクと関連しています。特に習慣性のいびきや睡眠時無呼吸症候群を伴ういびきは、以下のような深刻な健康問題を引き起こす可能性があるのです。
日中の強い眠気と集中力低下:睡眠の質が低下することで、日常生活やパフォーマンスに影響
高血圧:睡眠中の低酸素状態が血圧を上昇させる
心疾患リスクの増加:心筋梗塞や不整脈などのリスクが高まる
脳卒中リスクの上昇:健常者の4倍のリスク
糖尿病の発症リスク増加:健常者の1.5倍のリスク
記憶力や判断力の低下:脳への酸素供給不足による認知機能への影響
免疫機能の低下:体の回復プロセスが妨げられる
うつや不安などの精神的問題:睡眠不足によるメンタルヘルスへの影響
特に注目すべきは、近年の研究でいびきと認知症の関連性が指摘されていることです。睡眠中の低酸素状態が続くと、脳内に「アミロイドβ」というタンパク質が蓄積しやすくなります。このタンパク質はアルツハイマー型認知症の原因物質として知られており、通常は良質な睡眠中に脳から排出されるものです。
いびきを改善する7つの方法
いびきの原因は人それぞれ異なりますが、以下の7つの方法を試すことで、多くの場合改善が期待できます。
1. 体重管理と生活習慣の改善
肥満はいびきの大きな原因の一つです。首周りに脂肪がつくと気道が圧迫され、いびきが悪化します。BMIが25を超える方は、適正体重を目指した食事管理と運動を心がけましょう。
また、就寝前のアルコール摂取は筋肉をさらに弛緩させるため、いびきを悪化させます。寝る3時間前からのアルコール摂取は控え、十分な水分補給を心がけましょう。
喫煙も気道の炎症を引き起こし、いびきの原因となります。禁煙することで、いびきの改善だけでなく全身の健康増進にもつながります。
2. 睡眠姿勢の工夫
仰向けで寝ると、重力の影響で舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。横向きの姿勢で寝ることで、いびきを大幅に軽減できる場合があります。
横向きの姿勢を維持するためのコツとしては:
体の後ろに枕やクッションを置く
専用の横向き睡眠用枕を使用する
テニスボールをTシャツの背中に縫い付ける(仰向けになると不快で自然と体勢を変える)
また、枕の高さも重要です。高すぎる枕は首を圧迫し、気道を狭くします。自分の体型に合った適切な高さの枕を選びましょう。
3. 口呼吸から鼻呼吸への改善
口呼吸はいびきの大きな原因の一つです。鼻呼吸に改善することで、いびきを大幅に軽減できる可能性があります。
鼻づまりがある場合は、その原因に応じた対策が必要です。アレルギー性鼻炎には抗アレルギー薬、鼻中隔湾曲には手術的治療が効果的なこともあります。
日常的には、以下の方法で鼻呼吸を促進できます:
就寝前の鼻洗浄(市販の鼻洗浄器具を使用)
加湿器の使用(乾燥による鼻粘膜の炎症を防ぐ)
鼻呼吸トレーニング(口を閉じて鼻で呼吸する習慣づけ)
鼻腔を広げるテープや器具の使用
4. 舌と喉の筋トレーニング
舌や喉の筋肉を鍛えることで、睡眠中の気道閉塞を防ぎ、いびきを改善できることがわかっています。以下のトレーニングを1日数分、継続的に行うことで効果が期待できます。
舌の前後運動:舌を前に突き出して5秒間キープし、次に舌の先を上の歯の裏に付けて5秒間キープする。これを10回繰り返す。
舌の上下運動:口を開けて、舌を上顎に押し付けて10秒間キープし、次に下顎に押し付けて10秒間キープする。これを10回繰り返す。
あいうべ体操:「あ」「い」「う」「べ」と口を大きく動かして発音する体操。各音を10秒間ずつ行い、3セット繰り返す。
これらのトレーニングは、朝晩の歯磨きの時など、日常生活の中で無理なく取り入れることができます。継続することが重要ですので、毎日少しずつでも続けていきましょう。
5. マウスピース治療
歯科医療の分野からのアプローチとして、睡眠時無呼吸症候群用マウスピース(口腔内装置)があります。これは下顎を前方に保持することで、舌が喉の奥に沈み込むのを防ぎ、気道を確保する装置です。
東京BTクリニック歯科・医科では可動式、固定式のマウスピースを患者さん一人ひとりのお口の形状に合わせてオーダーメイドで作製します。CPAPなどの装置に比べて装着感が良く、持ち運びも容易なため、旅行先でも使用できるというメリットがあります。
特に軽度から中等度のいびきや睡眠時無呼吸症候群の患者さんに効果的で、CPAP療法が合わない方の代替治療としても有効です。
6. 最新のレーザー治療
近年注目されているのが、レーザーを用いたいびき治療です。「ナイトレーズ」とも呼ばれるこの治療法は、いびきの原因となる喉や口腔内の緩んだ組織に特殊なレーザーを照射し、組織を引き締めて気道を広げる効果をもたらします。
従来のメスによる手術とは異なり、このレーザー治療は痛みが少なく麻酔の必要がありません。治療時間も約15〜30分程度と短く、治療後すぐに日常生活に戻ることができます。
レーザー治療は以下のような方に適しています:
いびきが原因で家族に迷惑をかけていると感じている方
睡眠の質が低下し、日中の疲れが取れにくいと感じている方
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方
痛みや負担の少ない治療を希望している方
手術や入院を避けたい方
個人差はありますが、1~4回の治療で効果を実感いただける方が多いです。また、最初に3〜4回の治療をしておくと、またいびきが気になってきたときに、単回の治療で効果が出るというメリットもあります。
7. 子どものいびきと顎顔面骨格矯正
子どものいびきには、扁桃腺やアデノイドの肥大だけでなく、顎の発達不全や歯列の問題も関係していることがあります。
顎顔面骨格矯正によって上顎を広げ、鼻呼吸を促進することで、いびきの改善だけでなく、顎の正常な発達も促すことができるのです。
いびき治療はどこに相談すべきか
いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療は、複数の診療科が関わる分野です。症状や原因によって、適切な相談先が異なります。
各診療科の特徴
耳鼻咽喉科:鼻づまり、アレルギー性鼻炎、扁桃肥大など、上気道の問題が原因のいびき
睡眠専門外来:睡眠時無呼吸症候群の診断とCPAP療法などの治療
歯科・口腔外科:マウスピース治療、顎の形態異常、歯列不正が関係するいびき
内科:肥満、生活習慣病が関連するいびき
小児科:子どものいびき、扁桃腺肥大、アデノイド肥大
まずは、かかりつけ医に相談し、適切な専門医を紹介してもらうことをおすすめします。また、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠専門外来での精密検査(睡眠ポリグラフ検査)が必要になることがあります。
歯科医院でも、いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療に特化したクリニックが増えています。マウスピース治療や口腔機能の改善、舌のトレーニング指導などを行っています。
東京BTクリニック歯科・医科でのいびき治療
当院では、いびきや睡眠時無呼吸症候群に対して、歯科医療の専門知識を活かした総合的なアプローチを行っています。
具体的には、以下のような治療オプションをご提供しています:
精密検査に基づくオーダーメイドのマウスピース治療
最新のレーザー治療(ナイトレーズ)
舌と喉の筋トレーニング指導
口呼吸から鼻呼吸への改善プログラム
顎顔面骨格矯正による根本治療
いびきは単なる音の問題ではなく、全身の健康に関わる重要なサインかもしれません。気になる症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ:いびき改善で健康的な睡眠を
いびきは「ただの音」ではなく、睡眠の質や健康に大きく影響する問題です。原因は人それぞれ異なりますが、適切な対策を講じることで改善できる可能性が高いものです。
本記事でご紹介した7つの改善方法を参考に、ご自身に合った対策を試してみてください。特に、習慣性のいびきや日中の強い眠気を感じる場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性もありますので、専門医への相談をおすすめします。
質の高い睡眠は、健康的な生活の基盤です。いびきの改善を通じて、より健康的で充実した毎日を過ごしましょう。
いびきでお悩みの方は、ぜひ東京BTクリニック歯科・医科にご相談ください。一人ひとりの状態に合わせた最適な治療プランをご提案いたします。
詳細はこちらのサイトをご覧ください。

著者情報 医療法人社団誠歯会 理事長 歯学博士 東京BTクリニック 歯科・医科 加藤 嘉哉 YOSHIYA KATO 【経歴】 東京歯科大学 総合歯科 東京歯科大学 インプラント専門外来 医療法人誠歯会 加藤歯科クリニック 開業 日本大学松戸歯学部非常勤講師 【資格・所属学会】 PRGF-Endoret® 指導医、公認インストラクター 日本口腔インプラント学会 専門医 日本臨床補綴学会 専門医 日本歯周病学会 認定医 IDIA顎顔面外科矯正 指導医 日本睡眠学会 日本睡眠歯科学会
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